「自分に何ができるんだろう?」「自分の強みって何だろう?」「何も取柄なんてないし」「資格もないし」「ずっと仕事ひと筋なだけ」
自律してシゴトをつくろうとするときに最初にクリアしないといけない課題です。相談に来る人ほぼ全員に当てはまる内容でもあります。自分の強みを見つけるためにはどうすればいいのでしょうか?
本記事ではミドルシニアが強みを見つけるためのアプローチ方法をまとめました。
相手のことはよく見える、自分のことはわからないがスタート
心理学に「ジョハリの窓」という理論があります。
人には、自分にも他人にもわかっている「開放の窓」(open self)、自分はわかっているが他人がわかっていない「秘密の窓」(hidden self)、自分はわかっていないが他人がわかる「盲点の窓」(blind self) 自分も他人もわかっていない「未知の窓」(unknown self) がある。自己開示とフィードバックで自分が知らない自分を知ることができる
人は相手のことはよくわかるけど、自分のことがわからない。自分の強みを浮き彫りにするためには「開放の窓」を大きくする必要があります。つまり自分のことを相手に話すのが全ての始まりです。話す前にいったん自分の手元に書いてみるとさらに明確になります。
自分が相手にフィードバックをしてあげるときは、「自分だったらこうする」「自分がお客さまだったらこう思う」という姿勢で取り組んでください。評論や批判するくらいなら最初からやらない方がいいです。「自分事」としてとらえてあげることを心に留めて。
コミュニティでは、この「書く」→「話す」→「フィードバック」という3つのステップワークを時間を決めてお互いにし合う方法をずっと継続しています。
相手のことを応援する気持ちを大切にとの思いのもと「チアワーク」と呼んでいます。これまでのたくさんの経験値から、自分のことを掘り起こす方法としてもっともシンプルでかつ有効な手段だと確信しています。
この3つのステップにはもう一つの効果があります。それは起業家にとって必要なスキルを磨ける点です。
決められた時間内で自分のことを的確に話すことは「言語化力」を磨くことにつながります。相手の話をしっかり聴くことは「聴く力」を磨くことにつながります。相手のことを短時間でつかみフィードバックすることは「質問力・発想力・コメント力」を磨くことにつながります。
「チアワーク」を繰り返し反復することで、お互いの強みを知り応援し合い、同時に起業家としてのスキルアップもできる。まさに一石二鳥効果を得ることができます。
自分を知ることから始める
第一歩は「自分を知る」です。自分自身の中にある「ダイヤモンドの原石」を見つけることと言えます。これがシゴトの原点になるからです。シゴトづくりとは人生の舵取り。なぜそのシゴトがしたいのかを明確にしましょう。
ダイヤモンド原石を見つけるプロセスを「じぶん棚卸」と言います。今までの人生を振り返り、自分のリソースと人生での出来事をまるごと書き出し、話し、フィードバックをもらうプロセスです。ミドルシニアが自分の価値を知る超重要なプロセスになります。
実際、じぶん棚卸をやるといくつかのカベに当たります。
まず頭の中だけで考えてしまうカベ。頭の中だけで考えているとぐるぐる回るだけ。そんなときは紙に手書きで書き出してみます。なぜ手書きなのか。手書きすることで頭が整理されます。脳が動くから。そして書いた当時考えていたことが思い出せるから。
パソコンで書いているのは単なる記号の羅列にしかなりません。
「今日は100個自分のワクワクと好きなことを書き出す。もうこれ以上出なくなるまでやってみる。そのくらいの気持ちでやってみる。そしてその中のベスト5を選び出してみる。出てきたものを組み合わせて考えてみたら見つかってきますよ・・・」
ある人は、やりたいことが見つからない人に自分の棚卸経験をふまえアドバイスしていました。世の中にある新しいアイデアは、既存のアイデアの組み合わせでできています。
100個書き出す、まずつべこべ言わずやってみます。よく似たことがいろんな本にも書いてあります。でも実際に100個書くという行為を実行に移す人はごく一握りです。愚直にやれる人だけが周りから一歩抜け出せる存在になります。
棚卸がきちんとできていないと自分を知ることが不十分になります。結果、「このままでよかったのかな?」「そもそも何のために自分でやろうと思ったんだろう?」と途中でブレてしまいます。
いったんブレ始めると振り出しに戻ってしまうことにもなりかねません。それまでやってきた時間と労力が水の泡になります。じぶん棚卸を十二分にやっておくことをおすすめします。
正しい棚卸ステップを理解する
「自分の強みがわからないときはまずは自分を振り返ってみてください。必要なステップは棚卸しです・・・」
キャリア本にはこう書いてあります。
「棚卸しをやってみたが、強みは見つからなかった」「棚卸しをやってみたけどかえって堂々めぐり」「結局、自分は何がしたいのかわからなくなった」
こんなお話をよくききます。棚卸しには正しいコツと手順があります。それを知らずにただ闇雲に始めると思ったような成果は得られません。上記をふまえ手順を整理します。
手書きで書き出す
棚卸しには3つのステップがある。最初のステップは「書く」ということ。頭の中だけで考えても一向に前には進みません。いろいろなことを思っているだけではぐちゃぐちゃになるだけ。何事も書き出してみることで頭の整理ができてきます。
繰り返しになりますが、おすすめしたいのが「手書き」。面倒でも手書きで書き出すということにトライしてください。手書き文字で書くと脳が動く。書いた時の筆跡が残る。そうすると少し時間をあけて見直したときも「あ、こないだはこんなことを考えていたんだ」と思い出すことができます。
パソコンで打つとそれができません。文字変換に意識がいって集中力も分散します。アナログで面倒な作業かもしれませんが手書き効果を体験してください。
もう一つは、一度にすべてやろうとしないこと。考えるときは集中した方がいいです。時間を置くとまた違った視点が生まれるもの。何日か小出しにして書き出してみる方法をおすすめします。
第三者に話す
2つ目のステップは「話す」こと。書くだけで終わらせない。「棚卸しをやったけど堂々めぐりになって答えが出てこない」という人は書くまでで終わった人です。書いたことを必ず誰かに話してください。
自分が話す言葉を自分の耳で聴くことで理解が深まるという感覚を味わえます。自分ってこんなことを思っていたんだ!と気づきが生まれます。話すことで自分の思考が整理できます。書くだけで終わらせた場合と話した場合の差が大きく実感します。
ここで重要なポイントがあります。それは話す相手をちゃんと選ぶこと。相手としてベストなのは、同じ志をもつ仲間です。あなたと同じように自律を目指している人。
そういう人は同じ気持ちをもっているので誰よりも真剣に聴いてくれます。その代わりあなたも相手から依頼があったときはきちんとお返ししてあげることを忘れないでください。
同じ志の仲間はそうそう見つかりません。周囲に適切な人がいないときは、日頃あなたのことをあまり知らない、他業種の人に話してみます。
話す相手として良くないのは、あなたのことをよく知っている友人。話しやすい反面、あなたに対する先入観をもっているので客観的な視点がなくなってしまうからです。
フィードバックをもらう
3つ目のステップが「フィードバックをしてもらう」こと。聴いてもらった相手から質問、感想や気づいたことをコメントしてもらいます。
まずは質問してもらうことです。自分が考えていることは質問を受けることでさらに磨かれていきます。
「それってどういうことなの?」「何でそう思ったの?」「その時どんな気持ちだった?」
質問の答えを話しているうちに自分の考えがどんどんまとまっていきます。あなたの持つダイヤモンドの原石が客観的に浮き彫りになっていく瞬間です。
自分の強みはどんなところかを聴いてみるのもありです。
「これってすごいですね!」「他の人ではできないよー」
「えっ?そんな大したことでもないし自分では当たり前と思っていた」
こんな会話が出てきます。これがフィードバックの醍醐味です。
棚卸をより効果的に行う方法|経験者生の声
ここまで棚卸の重要性について解説してきました。作業に入るとどこまで掘り下げたらいいのか、どうやってやればいいのかわからなくなります。棚卸に実際取り組んで成果を出した人の体験談を紹介します。
「子供の頃ケガをした」「幼稚園でわがまま放題だった」こんなこと仕事をつくるのには意味がないというもの、くだらないと思うものこそ書き出す。潜在意識の中にある原体験をあぶり出してみることが大切」
まず質より量を書き出すこと。お風呂やトイレでもメモを持っておいて何か思い出したら書く。やっているうちにいろんなことを思い出してくる。酔っ払ったときにふと思い出すことなんかも重要
考え始めると止まってしまう。そんなときはいったん考えるのをやめてみる。嫌な出来事を思い出したら無理せず進める。その繰り返しで自分の中に溜め込んでいるものを吐き出してみる
過去のマイナス経験に目を向けてみる
「資格を取るために仕事を辞めました。毎日は貯金の切り崩しで生活していました。なかなか合格できなくて、もうホームレス寸前というところまで行きました」
こんな体験談を話してくれた人がいます。
「それってすごいことじゃないですか!」「その体験こそ○○さんの最大の強みです」「はあ・・・」
働き方モヤモヤ相談の中での会話です。僕の言葉にその人はきょとんとしていた表情をしていました。
「こんな恥ずかしい話が強みになるんですか?」「できるだけ人には言いたくないことなんですよね」そう続けました。たしかにそういう一面のある話です。一見弱みにしか見えないことかもしれません。
もう一つこんな会話のキャッチボールがあります。
「自分の強みって何だと思いますか?」
「そうですね、目標にこだわってそれなりに達成できてきたところかもしれません」
「なるほど。じゃあ目標達成できない人にこうすればできるといきなり指導するのと、今どんな悩みを抱えているのかヒアリングしてから始めるのとどちらがいいですか?」
「できたら先に悩みを聴いてほしいですね」
この二つの会話には重要なポイントがあります。それは相手の悩みをきちんと受け止められるか否かということです。
資格の取り方講座や目標達成セミナーを受講したときを想像してみてください。講師からこうすればできる的な成功体験やノウハウだけを並べられたらどんな気持ちになりますか?そのまま素直に受け止めて実践できますか?それができないから講座を聴きに来たのに・・・となるのではないですか?
ビジネスは相手の悩みを解決してあげて対価を得るもの。お客さまと最初に接点をもったとき、いきなりアドバイスやレクチャーをしても意味がありません。
まず今相手がどんな状態にいるかをきちんと受け止め把握してあげることが第一。そのために相手の悩みは自分自身が体験したことでないと真意を理解することはできません。
「つらかったんですねー」言葉だけで言っても上っ面です。
「本当の苦労をわかってないな・・・」相手には見透かされます。
「この人は自分と同じ経験をしているんだ。だから今の気持ちをわかってもらえる」
そう感じてもらうことが肝要です。
もしつらい経験、苦労した経験をもっているのならそれが強みになります。弱みが強みに変換される瞬間です。あまり他人には話したくないマイナス体験を一度書き出してみましょう。そこに専門性をつくるヒントが隠されています。
これまでずっとコンプレックスで抱えていたことって何ですか?自分で短所だと思っていることはどんなことですか?
一見マイナスに思えることは視点を変えることで強みに変わります。ビジネスは相手の悩みを解決してあげること。その大前提は相手の悩みを理解すること。自分が悩んだことだからこそ相手の本当の悩みが理解できます。
ミドルシニアは数々の経験を積み重ねています。他の世代より厚みがあります。一度相手の悩み事に全力で答えてください。そのやりとりの中から生まれてくるものが見つかります。
子供の頃に夢中になったことを思い出してみる
小学生だった頃、どんなことに没頭していましたか?子供の頃に得た原体験は今の自分を形作っています。子供の頃は既成概念がないので純粋に自分が好きだと思うことをやっていました。純粋に好きは情熱やワクワク感の源。情熱、ワクワク感を持てることはあなたの強みを決める要素になります。
「これまで10年間、自分ができることで食べてきました。でもずっと違和感がありました。ある日、子供の頃によくやったガンダムのプラモデルを作ってみました。あの頃のワクワクが蘇ってきました。この気持ちを軸に新事業を立ち上げます。晴れ晴れしい心境です」
知り合いの起業が話してくれました。まさにこの話の中にエッセンスが散りばめられています。ミドルシニアは世の中のしがらみで固まっています。いったんその鎧を脱ぎ捨ててみましょう。
これまでで一番感動したことを書き出してみる
シゴトはずっとやりがいをもって心からたのしんでできるのがベスト。それを見つけるための一つの質問があります。
「あなたがこれまでで一番感動した本、映画、ドラマなどは何ですか?その理由は?」です。
こんな実体験があります。つい先日この質問を受けました。感動・・・なんだったっけ?いろいろと思いを巡らせました。時間が短かったので最近感動したものを思い出してみました。
当時やっていたドラマ。限界集落と呼ばれる村。でもそこには自然と人のすばらしさがある。市役所職員が村の人一人ひとりと向き合い一緒になって職員の常識を超えて。
政治家の私利私欲でできた既成概念をぶち壊して。みんなで「よかったねー」と心からよろこび合える瞬間。自分が主人公になって考えるといてもたってもいられない気持ちになった。シンプルなストーリーなのに涙した。
それがなぜ感動したのかを話し始めました。すると話しながらどんどん熱くなっていく自分がいるのがわかりました。うまく表現できませんが、心の奥底から湧き出てくるようなエネルギーを感じました。
聞いていた人も「声のテンションが一段上がってましたよ」と言ってくれました。そのとき実感しました。「自分が本当にやりたいことってこれなんだ!」と。
本当にやりたいことは発見するものではありません。ミドルシニアがこれまでの経験と行動から生まれてくるものです。「これまでで一番感動したものは何ですか?そしてその理由は」】自問自答してみてください。
自分の想いは口に出すことで初めて相手に伝わります。実際に話してみて熱量が上がること。
「そんなこと思ってたんだ!」「そんな経験したことがあったんだ!」「さっきまでと話し方のテンションが違うよ!」
こんなふうに言ってもらえることがあなたの強みです。そうしたやりとりで相手はあなたを応援しようという気持ちにもなってきます。
人からよく頼まれることを考えてみる
よく人から頼まれるのはどんなことですか?頼まれるということは自分にはできないから。つまり相手にない能力を持っているという評価の表れです。
複数の人から頼まれるということはニーズがあるという証。どんなささいなことでもいいです。むしろささいなことにこそ目を向けてください。ニッチなニーズが他と違うビジネスをつくる材料になるからです。
知り合い友人に自分の取り柄を訊いてみる
ずっと考え続けていても核心になる答えは見つからないときは、率直に第三者に聴いてみましょう。「自分の取り柄って何だと思う?」直球で質問してみましょう。
友人には先入観があると解説しました。でも一方で自分のことを深く知ってくれているのも事実です。改めてちゃんと聴いてみると驚くような言葉が返ってくることでしょう。
ジョハリの窓で解説した通り、人には自分では気づけない自分がいます。この自分は第三者にフィードバックしてもらうしか見つける方法がありません。必ずやってください。
まとめ
自分のことは自分だけではわかりません。ダメなことしかないと思っているのは自分だけ。一番の強みはあなたが歩んできた人生そのものです。
人生はあなただけのものです。あなたにしかない経験です。そうオンリーワンなんです。人生を50年生きてきた足跡には価値があります。
今の時代、個人にスポットライトをあてること。個性を大切にすること。一人ひとりが個性を生かしてつながっていくことでワクワクした世の中が生まれていきます。