ライフイベントが多岐にわたる女性にとっての仕事や働き方は、男性とは違う特別な事情があります。特に40代という年齢には人生設計をどうしていくかの切実な問題も加わってきます。10年にわたり働き方多様化支援を行ってきた経験から、この記事では40代女性がもつ働き方への悩み、やりがいのある仕事を見つけるためにどうしたらいいかの具体的一歩についてまとめました。
40代女性ならでは仕事の悩み
「契約社員をやってきた。子育てもひと段落ついた。このままでいいのかと心の中に迷いが出るようになった。何か自分が思っている方向とは違うような気がする。やってみたいアイデアを形にする方法がわからず悩んでいる」
「これまで自分のためにいろいろやってきた。でも本当にやりたいことは見つかっていない。会社員でいることも悪くないとは思う。でも自分らしさという点では思うようにならないこともたくさんある。少しでも自分らしい生き方に近づけるようになりたい」
「これまでずっと仕事を真面目にやってきた。60歳を過ぎても働き続けたいと思っている。でもそのためには雇われではだめだと感じるようになった。生涯現役で人の役に立つ仕事をしていきたい。そのための一歩を踏み出せたら」
「子供が生まれるまでずっと第一線で働いてきた。子育てとともに家庭に入った。子育てが自分の仕事だと思って一生懸命やってきた。少し子供が手離れしてきた。社会に復帰したい。でも今の自分に何ができるのだろう?」
これまで働き方モヤモヤ相談で受けてきた生の声です。女性には結婚、出産、子育てなどライフイベントがあります。そのときに置かれた状況に応じて自分の人生が動いていきます。仕事ひいては働き方をリセットしないといけないときがやってきます。それは自分自身のことを見つめ直すタイミングでもあります。40代はその最たる年代と言えます。
40代女性が働き方でモヤモヤするパターン
働き方モヤモヤ相談には日々40代の女性が訪れてきます。「何も決まっていないし漠然と自分で何かできないかなあと考えているだけ。こんなレベルで相談していいの?と思ってました・・・」第一声はみんなこんな感じです。ちゃんと決まっていないと、整理ができていないと相談なんてできない・・・そう思っているのでしょう。でも最初はみんな何も決まらないモヤモヤから始まります。一人でモヤモヤしていても出口は見えません。
整理ができないときどうしたらいいのでしょう?まず今頭の中にあることをメモに書いてみること。頭の中だけだとあれこれいろんなことが巡って山ほど解決しないことがあるように感じてしまいます。でも書き出すと意外にこれだけだったんだとわかったりします。
そして次はそれを第三者に話すことです。自分の口に出して話すことでさらに整理がついていくのがわかります。それは自分の声を脳がきいているからです。「自分ってこう考えていたんだ」話しながら整理がついていきます。
「本を読んだけど自分がやりたいことが見つからない。これかなあ?と思ったものもそれでいいのか自信が持てない。どうしたらいいの?」自分の本当の強みとか魅力は自分だけではわからないものです。「自分がこれまでに経験したことなんてたいしたことないし・・・」そう考えがちです。
相手に質問されて自分のことを話してみる。「あ、そうなんだ!」と気づくこと。あなたの経験が世の中の誰かを救うことがあります。人には自分が知らない、自分ではわからない自分がいます。会話のキャッチボールが大切です。
「きっちりビジネスをかためないと動くのは良くないのでは?」こんな思いもあるでしょう。でもそんなことはないのですね。最初にきっちり決めないといけないのは「自分軸」です。なぜそのシゴトがしたいのか?その理由はこれこれというのをを確立するです。その上にビジネスという形が乗っかっていきます。
モヤモヤと考えているだけでは前に進むことはできません。漠然としたところからで十分。まずは書き出してみる。そして第三者に話してみる。口に出して話すことから突破口は見つかっていきます。
40代女性仕事の悩み|同じ会社に長く勤めてきた閉塞感
「毎日決まった人と顔を合わせて指示された仕事をする。会社に長年勤めてきたけど、ずっと閉塞感があった。会社の都合で異動があると、そのことで自分の生活が大きく左右される。そんな職場に縛られる生活はもういいし、このまま続けていくのにしんどさも感じている。自分の中にこれがやってみたいという明確なものはない。でも一方で自分にだってできそうなこともありそうな気がする。でもこの安定から離れる恐怖心もある。もしダメになったらどうしようと。どうしたらいいかずっとモヤモヤしています」
長きに渡り同じ会社に勤めてきた。過去何度か進路を考えたこともあった。でも一歩踏み出すまでには至らずにここまで来た。こんなケースもあります。
「ダメになったらどうしよう・・・」みんな感じることです。その時やってほしいこと。それはダメになるってどういう状態のことをいうのかを具体的に考えてみることです。そしてもしそうなった時どういう対応をするかも考えます。不安は先が見えないから募るものです。不安に感じることを明確にしてください。
そしてやってほしいことは自分を知ることです。自分に何ができるんだろう?と頭の中で考えていても答えは見つかりません。まずはこれまでの人生を書き出してみます。箇条書きでなく文章にして書き出すのがコツです。そうすることで忘れていた出来事が映像として思い出されてきます。自分の根っこはここにあったんだ・・・それが見つけるためのプロセスです。
次は書いたことを第三者に話してみましょう。「あ、自分はこんなことを思っていたんだ!」話すことで自分の考えが整理できます。あわせて「そんなすごい経験をされているんですね」と相手からフィードバックがもらえます。自分では当たり前と思っていることが他人からみたらすごいことだったりします。
書き出しただけでは自分自身の深堀りはできません。あなたの話を受け止め、真摯にフィードバックしてくれる人を選んで話してみてください。ここが重要なポイントです。
40代女性働き方の悩み|子育てとの両立
「新卒で入社以来勤めてきました。それなりに一生懸命やってきた結果、マネージャー職にまでなりました。そんなある日訪れた妊娠という転機。出産に伴い1年間の育休を取りました。育休を終え仕事に復帰。時短制度を希望すると仕事内容までパート的なものに追いやられてしまいました。時短と言いながらふたを開けると補助的業務。納得がいきませんでした。出産前の第一線に戻るとしたら帰宅は夜遅くになってしまいます・・・」
「仕事にはやりがいをもって臨みたい。でも周囲の空気は旧態依然。出産後の自分を受け入れてくれる環境もない。転職も探してみたけど40代で自分がやりたいことを至難の業。だったら自分でやってみるという選択肢もあるかと思うようになった。でも起業ってすごく大変なことに思えてどうすればいいかわからなくなった・・・」
育休などを導入する企業は増えてきています。でも実情としてはうまく機能していません。制度はあるけど育休そのものが取りづらい。取得したとしても復帰した後の受け入れ環境が不十分。そんな現状があります。企業が対外的に働きやすさをPRするためにだけに制度をつくるといった形式的なものもあるようです。
女性にとって子育てと仕事の両立は大きな問題。「結婚して一時主婦業に専念。子育てがひと段落したので仕事に復帰しようとしたけど、自分の思う仕事につけない。家庭に入ったブランクが取り戻せない」「以前はバリバリ一線で働いていたけど子育てのため退職。その後タイミングをみて復帰を考えたけど子育てと仕事の両立に不安を感じる・・・」40代女性のこうした状況の相談事例はたくさんあります。
会社が受け入れをしてくれないのなら自分でやってみる。これからの時代、持っていたい選択肢です。会社の制度と環境が整うのを待っていたらいつになるかわかりません。これまでそれなりに真面目に仕事をしてきた人には経験から積み上げた能力があります。
加えて女性ならではの感性があります。生かさない手はありません。大きな収入でなければ自宅にいながらにしてできるシゴトはいくらでもつくることができます。その方法が複業です。
まず自分の価値観を定めてください。ご家族とともにこれからの人生どうありたいかを考えてみてください。自分がこれまでにやってきたことを全て振り返ってみます。その中から見えてくるものがあります。複業は身の丈でやります。小さな困り事にフォーカスします。そんな中から自分サイズのしあわせをつかむ手段が見つかります。
転職それとも起業?もう一つの選択肢
「これまでいくつかの仕事を転々としてきました。40代を迎えこれから自分の人生もあるので仕事をどうするかモヤモヤしています。このまま転職なのか、それとも自分で独立起業してやっていくのか?ぜんぜんまとまっていないんですが聴いていただけますか?」
転職か起業か?働き方に行き詰ったときに出てくる二択。どっちがいいの?そんなときは各々のメリット、デメリットを書いてみることからはじめてください。
転職を選んだとき。メリットは収入が確保できること。デメリットはなかなか転職先が見つからないこと。見つかったとしても自分の思った通りのことができない、またどこかで行き止まりになってしまうこと・・・。
起業を選んだとき。メリットは自分の思ったことができる。自分らしい人生を踏み出すことができる。デメリットはいつ軌道に乗るかがわからないこと。お金の不安がついてまわること。本当に自分がやりたいことが仕事になるか不安なこと・・・。こんな感じで書き出してみてどっちなのかを冷静にみていってください。
実はもう一つ選択肢があります。それが「複業」です。「副業」ではありません。今の仕事ともう一つ、本当に自分がやりたいこと、自己実現できることでシゴトをつくっていきます。複数のシゴトをするという意味で複業と言います。
複業ならいきなり会社を辞めたりしないので収入の不安はなくなります。収入が確保できた中で自分がやりたい軸を定めていきます。自分軸が定まったらそれを具体化するシゴトを組み立てていきます。
40代を過ぎて「働き方」を決めることは、「生き方」を決めることにもつながります。大切なことは自分の「未来」をどうしていきたいかです。目先のことだけにとらわれていると、またすぐに壁にあたってしまいます。年齢を重ねても自分でずっと仕事をしていたい、生涯現役を目指したいのなら複業がベストです。
40代女性が複業ネタを見つける方法
じゃあ自分に何ができるの?ということになりますね。大した趣味もないし一般事務畑でやってきただけで取り柄もない。そんな中で複業なんて・・・そんな気持ちになるでしょう。ここで発想転換します。自分にとっては大したことがない経験でもそのことで救われる人が世の中にいるという視点です。
例えば派遣社員を長くやってきたという人の場合。「正社員をやっていないから何もできない」というのが普通考えることです、弱みに感じるところかもしれません。ここで逆転の発想をします。「派遣社員をずっとやってきたからこそわかるものは何なのか?それは派遣社員をずっとやってきている人の気持ちや悩みがわかるということ」ここに重要な要素があります。
ビジネスは困っている人の問題解決をすることで対価を得ます。そのとき相手の気持ちが自分事として理解できることが必須になります。正社員でやってきた人には派遣社員でやってきた人の気持ちはわかりません。
契約社員をずっとやってきたことは弱みでなく強みになります。ほんの一例にすぎませんが、一見弱みにしか見えないことは実は強みに転じることができるのです。苦労は宝。あなたが弱みだと思っていることを第三者に話してみてください。その中から新たな気づきが生まれてきます。
40代女性が複業を始めるとき最初にすること
「何年も前からいつかは自分でビジネスをやってみたいと思ってきた」「自分が好きなことを仕事にしたいと思い続けてきた」「ものづくりがしたくていろいろなものに手を出してきた」「好奇心だけはあるので浅く広くかじってきたけどこれというものがない」「自分にできることなんてあるの?」
女性にとっての40代は転機になる年代だ。それなりに社会経験を積んできている。これからは「自分らしく生きていきたい」という想いが強くなる。すばらしいことだ。じゃあ、自分で仕事を始めたいというとき何から手をつければいいのだろうか?
40代女性がシゴトづくりを志すとき、まずやってほしいこと。それは「自分軸」をかためることです。「自分軸」とは「なぜその仕事がしたいのか?」「どんな人にどんな価値を提供したいのか?」という2つの質問に対する答えをつくることです。答えをつくるためにこれまでどんな人生を歩んできたのか?たのしかったのか?つらかったのか?自分のワクワクは何なのか?どんな経験をしてきたのか?あらゆる視点でこれまでの自分を掘り下げていきます。
これを「未来地図&棚卸」と言います。自分を主人公にして物語を書き出していく作業です。シゴトづくりへ向けた棚卸は世の中によくあるキャリア棚卸とは意味合いが違います。自分がどうありたいか、そのために働き方をどう定めていくかを決めていきます。
自分軸がないと自分探しの旅に出てしまうことになります。いったん自分探しの旅に出てしまうと、自分探しばかりで出口が見えなくなります。「本当の自分を発見できる」的なセミナーに参加したり、そういう種類の本を買いあさったり・・・それが何年、何十年も続いている人もいいます。これでは前に進むことはできません。
ブレない自分軸を定めること。終わりのない自分探しの旅に出ないこと。40代女性が自律した働き方へ踏む出すとき、忘れないでほしい羅針盤です。
40代女性が働き方を方向づける3つのキーワード
「自分らしさ」「生涯現役」「人の役に立つ」3つのキーワードを覚えてください。「自分らしさ」を言葉で置き換えると「個性」ということになります。自分にしかない個性を深堀りすることはビジネスを立ち上げる時に重要なカギになります。それは「◯◯さんだからお願いしたい!」をつくるものです。今の時代、商品サービスの良さだけでビジネスは成り立ちません。
「生涯現役」素晴らしい言葉です。定年が来たからリタイアする・・・そんな時代はもうとっくに終わっています。60歳から新しい人生を踏み出す、そのために今のうちからしっかり準備する助走していく。そんな想いに立ってください。考え始めるだけでワクワク感が生まれてきます。
「人の役に立ちたい」シゴトをつくる根っこにあるものです。お金を稼ぎたいだけでは継続はあり得ません。自分の実体験を通じて世の中の誰かを救ってあげたい。この気持ちがシゴトのです。たくさんの人でなくても大丈夫。あなたのことを必要としている人は必ずいます。
40代女性のシゴトづくりは新しい人生設計のための手段になります。お金を掛けることなく、自分のこれまでの経験、持っているものの中から相手に役立つものを見つけてスタートしてみましょう。まずはそのための小さな第一歩を踏み出してください。