50代という年齢。サラリーマンとしては大きな転機にさしかかる時です。新型コロナ禍でその波は加速しています。早期退職制度、それに伴う再就職といったものを直視しないといけません。
ある日突然降りかかってくる現実。会社ひと筋で来た人にとって先の見えない不安が充満します。本記事では早期退職、リストラ、再就職の実態とそこからどんな未来を描いていくのかをまとめました。
早期退職・リストラ再就職のリアル
職務履歴書を書いてみて外にはじめて出てみた。改めて自分の強み、弱みってなんなんだろう?と感じるようになった。それ以前にそもそも今なぜ自分は働いているのか?お金のためだけに働いているんじゃないのか?じゃあ、起業なのか?でも起業といってもいろんな仕事があるし、自分が何をしていいのかわからない。転職なのか起業なのか、わからずにモヤモヤしている・・・
働き方モヤモヤ相談にいらした人の生の声です。50代から早期退職をしたら、まず再就職という選択肢が出てくる。これまで長年同じ会社で勤めてきてここにきて再就職。果たしてうまくいくのだろうか?そもそも転職活動ってどういうもの?何からはじめたらいいの?
たくさんの不安が出てくることでしょう。経験のない世界のことですから当然です。50代前後の中高年になって再就職する実態とはどんなものなのか?僕自身が10年以上前その年代で実体験したことを共有します。
まず再就職という選択肢。それまで大手でそれなりの仕事をしてきた自信がありました。今までの経歴でいけば引く手あまたなのではと思っていました。ところがそんなプライドは転職活動をスタートしてわずか1ヶ月ほどでへし折られることになりました。
インターネットで検索します。「46歳 転職」などで検索すると多数のサイトが出てきます。「中高年のハイクラス転職」「50歳の転職ならリクルート」「45歳から49歳転職の積極活用」そんなフレーズが並びます。
これはハイクラスでもいけるんじゃないか・・・少し期待してサイトを選び会員登録、求人をみてみます。結構あるじゃないか・・・一見そう見えます。履歴書と初めて職務経歴書なるものを作って応募。
でもその結果は散々な目にあいます。ことごとく書類選考で落ちていきます。何十社もこの状況が続くと「オレはダメ人間なのでは?」自信喪失、人間不信にさえなっていきました。
次に思いつくのがハローワーク。とりあえずネットで場所を探し、行ってみることにしました。ハローワークに着くとあふれるほどの人が来ています。こんなにたくさんの人がいるんだ・・・。会社で仕事をしている昼間の時間にまったくの別世界があります。まずはその光景に驚かされました。
失業という言葉のもつネガティブなイメージ。その場にいることに変な後ろめたさを感じる自分がいたのを思い出します。
暗い表情でひたすらパソコンに向かっている人たち。いったい何をしているんだろう?あとになって求人情報を集めている人たちだということがわかります。
とりあえず個別相談かな?と申し込んでみました。たくさんの順番待ちをして相談窓口の人に現状を訴えます。初めてなのでわらにもすがる思いです。
それに対し相談窓口の人は慣れた口調でハローワークの仕組みを説明してくれるだけ。えっ?それだけなの?あっさりしすぎてない?そんな感じをです。一日何人もの人を受け付けていたら無理もない話だと後になってわかります。
そしてそのうちに自分もパソコンで求人を探す一人になっていました。何度か通っているとそのことに慣れていく。最初に見た衝撃的な気持ちもそのうちなくなっていく・・・環境が人を変えていく現実です。
中高年の求職者の3分の1は、退職から1年経っても希望の就職先が見つからない。残りの3分の2は、会社が用意する再就職支援サービスなどを活用して、何とか転職先は見つかるものの大半は待遇が落ちる。中高年の再就職先の年収は前職の7割なら御の字・・・
日経ビジネスの「早期退職の経済学」特集から引用したものです。ほんとにそうなの?と思うかもしれません。でも実際こうなります。まさに実体験の通り。50歳前後で早期退職、再就職を選んだ先にはこんな実態が待っています。
そのことを理解した上で今後どう進んでいくのか?自分の人生をどう舵とりしていくのか?ハラを決めることが最初のステップになります。
早期退職の準備ができている人とできていない人の違い
知り合いが自分の会社でリストラが始まった話をしてくれました。ある日招集され説明会があったとのこと。事業分門ごとに整理し閉鎖し、子会社もしくは関連会社への出向、転籍を促す内容。
もちろん行った先ではポジション、給与ともに大幅にダウンする。これまで同じ環境にいた人にとっては、やってきた職場とは全く畑違いのところへ行くことの不安が押し寄せてきます。
リストラは一度オープンになると容赦なく進んでいくとのこと。個別面談の席では「お前は会社に残って何の価値があるんだ?」などと言われる人もいるそうです。
これまで会社の発展のために一生懸命やってきた人に対して言える言葉でしょうか。不要になると手のひらを返したような仕打ちを平気でやる。話を聴いたときこんな会社はいずれ潰れていくと感じました。
自分は一応会社を辞める計画を立てているので慌てることはなかった。上司の説明は全く辻褄が合っていなくて不満のもとになっていた。説明を聴いていて内側にいるからこそわかることもあって何だか滑稽に見えた
リストラ勧告されても今後何とか会社にしがみつきたいという人はたくさん出てくるはず。そうすると退職金の上積みという対策が出てくるだろう。会社を辞める計画をしていた僕にとっては好都合の状態になると思う。
知り合いのコメントです。彼は既に数年後に起業することを決めています。準備も着々と進めています。だから渦中にいながらも客観視できるし、状況を良い方向へ考えることができます。
一方、ずっと会社にしがみついて自分の将来のことを何も考えずにここまで来た人はお先真っ暗になります。両者の隔たりには相当なものがあります。あらかじめ自分の将来を考えて準備をしている人が勝ち組です。
「えっ?そんなことを急に言われても・・・」
「住宅ローンで家を建ててにっちもさっちもいかない・・・」
その時になって慌てふためく。そんなことを言っていても手遅れです。
「今までこれだけやってきたのにそれはないだろう」
「会社なんて信用できない」
と行き場のない不満を並べても全て自分に跳ね返ってきます。
ある会社でリストラが行われる、厳しい時代に突入した・・・そんなニュースを耳にします。「世の中的にはそうだけど自分にはないだろう」とどこかで高を括っていませんか?
リストラ早期退職はいつ何時自分に火の粉が降りかかってくるかはわかりません。そうなる事態を予測して自分の今後の人生設計を整理しておくこと。そして具体的な準備を始めておくこと。今の時代、これに尽きます。
目の前の現実を前向きに受け止める
早期退職が現実になる。前に進む方向が見えなくつらい状況に感じる。同じような経験があるのでよくわかります。でも下を向いていても何もはじまりません。考え方を少し変えてください。
これまで◯十年以上サラリーマン一辺倒だった人生。「このままでいいのか?」そう思えるタイミングがきたと受け止めてください。新しい人生へ向けてのチャンス到来です。
ここで改めて自分のこれまでを総ざらいして振り返ってみる。そしてこれからの自分の未来を描いてみる。自分が主人公になる人生とはどういうことなのかを考えてください。今のような状況が来なかったら、会社の縛られた自分を失った人生で終えていたかもしれません。
「このままでいいのか?」とても良い言葉です。これがないと人生は惰性の中でながされていきます。ふと気がついたときはもう遅かった・・・そんなことになります。
たった一度の人生、こんなにもったいない話はありません。朝起きたらワクワクして生きていける毎日。そのために自分がどうありたいのか?原点回帰してください。
早期退職制度は前向きに活用する
早期退職制度の対象年齢が年々下がっています。会社によっては転職支援制度とか進路支援制度といった名前をつけているようです。今まで50歳以上が退職だったのが45歳以上になった。45歳以上だったのが40歳以上に下がったという声。相談内容からも伺えます。
終身雇用制がなくなったとか、会社は定年まで面倒をみてくれなくなったとか話題になりました。実態はまだまだそんな急を要する話ではありませんでした。ところが新型コロナで企業も待ったなしになった今、現実としてのリストラが加速してきているは当然のシナリオです。
早期退職制度がすごいのは、エントリーしたら退職一時金が上乗せされるのに加え、数年間の給料が出るというもの。そこまで手厚い優遇してまで、会社はリストラしたいのかと驚いてしまいます。
今まで一生懸命やってきた社員の気持ちを考える余裕すらなくなる状況なのでしょう。さみしい話ですがそういうものです。
前向きにとらえればそれだけ自分でやっていく道へ向けてのハードルが下がるということです。独立は軌道に乗せるまでのお金が大変です。この難局をどう乗り切れるかで次のステップが見えてきます。
そんな中、数年間にわたって収入が保証されるなんてありがたい話はありません。もし早期退職制度があってこれからの生き方に疑問を感じるのならチャンスをすぐに活用することです。
早期退職の選択肢
早期退職の選択肢には転職、独立起業、会社に残るの三つ。それぞれにどんなメリットがありどんなデメリットがあるのか?一般的な視点で整理してみましょう。
早期退職後に転職した場合。メリットは、当面の給料で収入が得られること。デメリットは、収入が減る、これまであった社会的地位がなくなる、新しい環境に慣れる労力、新しい仕事を覚えないといけないなど。特に今までひとつの会社で勤めあげてきた人は環境変化に柔軟に対応できるタフさが必要になります。
早期退職後に独立起業した場合。メリットは、自分の手で自由に人生を切り拓いていけること。毎日がいきいきワクワクすること。よくここで経営の醍醐味とか高収入とか社会的名声といったものがあげられる傾向がありますがそれは違います。
高収入とか社会的名声に目的を求める人は起業失敗のリスクが高くなります。開業に多額の資金をかけてスケールや見栄えを気にするからです。
中高年からの起業はお金をできるだけかけずに今までの経験に自分のワクワク熱量を掛け合わせてつくるものがベスト。デメリットは会社の庇護がなくなることと経済的不安定です。
あと一つ、早期退職せずに会社に残るという選択肢もあります。このメリットは当面の給与があること。デメリットは、仕事のやりがいがなくなる、収入が減る、プライドを捨てる、希望がなくなるなど。会社は生活の糧を得る手段と割り切る気持ちが必要になります。
早期退職の3つの選択肢。選ぶものさしは自分としてこれからどんな人生を歩んでいきたいのかが重要になります。目の前のことや勢いだけで安易に決めてはいけません。
シゴトづくりを後押しする早期退職制度
「50代、役職定年、このままでいいんだろうか?」「周囲では早期退職の話もちらほら出ている」「定年を過ぎ、嘱託になってまで働きたくない」「できれば70歳でも現役でやっていたい」「でも今自分のできることはあるんだろうか?」「できることと言えば今の仕事の延長線上・・・それで本当にいいのか?」「起業する心構えの人はこんなあやふやな気持ちではだめだときくし・・・」「どうしたらいいんだろう・・・」
これまで会社を引っ張るために一生懸命やってきた。でも一定の年齢になって先が見えなくなる。そんな状況です。来年、早期退職の募集がある。どうしよう・・・そんなタイミングにある人へ。
結論から言います。自分で人生をつくる道を選んでください。ただしいきなり独立起業ではなくきちんと準備を始めることです。今からすぐにです。
もしその道筋を決めたのなら早期退職制度を利用してください。早期退職ほど自分で立つ準備にありがたい制度はありません。
僕は46歳で会社を辞めました。会社での環境に苦難が重なり、切羽詰まってじっくり考えている余裕もない状況でした。後先考えず、いきなり独立の道を進み始めました。
もちろん早期退職といった制度もありませんでした。もしあのとき早期退職制度があったらどんなに助かっていたかと感じます。
早期退職は退職金が上乗せになります。一時金でもらえます。こんなありがたい制度はありません。もし活用できるタイミングにいるのなら必ず使ってください。自分でやろうとする気持ちをもつことです。
独立起業後、絶対持っておきたいのはキャッシュです。起業して1年、2年は食えません。ということはその間発生する支払いをどうしていくか?とにかく手元のキャッシュです。
お金は貯めるのは大変ですが、出ていくときは溶けるようになくなっていきます。このきびしい期間、早期退職金というまとまったキャッシュがあればひとまず安心です。これだけは手をつけないでおこうという蓄えにも充当できます。
「起業してしばらくは食えない。お金は溶けるようになくなっていく」
繰り返しになりますがこの事実を頭に留めておいてください。そうなることがわかっていれば慌てずに済みます。知っているか否かで現実に直面したときの心の持ちようは雲泥の差になります。
早期退職して起業を考えるときの落とし穴
早期退職して転職もおぼつかない。じゃあ起業という選択肢があるんじゃないの?こんな考えでモヤモヤ相談に来る人も多数います。
起業を志しても実際に開業後軌道の乗せられるのは一部と言われます。その理由は何だと思いますか?早期退職からの起業を考えるときに落とし穴があるからです。
「転職活動をしたけどうまくいきそうにないから起業を考えた・・・」
よくあるケースです。これではうまくいきません。ただの逃げ道、世間体だけで考えているようなケースは論外です。
起業は自分でシゴトをつくっていくことです。立ち上げていくにはそれなりのエネルギーが要ります。単なる選択肢の一つで考えていては途中で頓挫するのは目に見えています。
なんとなくカフェをやりたい、ペンションを経営したい、田舎で農業をやりたい・・・
こんなケースもうまくいきません。そもそもカフェやペンションをやるなら投資が必要です。カフェなら3000万円、ラーメン店なら1000万円、パン屋なら3000万円の初期投資と言われます。
投資するということはそれを回収していかないといけません。利益を出して数年にわたって回収していく。その間もちろん生活もしていかないといけません。
早期退職金を投じて物件を借り、内装にこだわって、立派なカフェをつくる。でもお客さまがまったく来ない。どうしよう・・・
当たり前のことですが、このことに気づかず開業スタートする人があまりにも多いのが現実です。独立は融資を受けて会社をつくってはじめるもの、そんな先入観もあったりします。だからたった1年で廃業に追い込まれてしまうのです。
早期退職後、独立起業を考えるなら、起業した後どんな人生をつくっていきたいのかを明確にもつことが先決。思いや情熱をしっかり持てることが土台になります。
きっかけはネガティブでもいい。それを契機にこれからの自分の人生をどう切り拓いていくのか?自分がワクワクできることは何なのか?毎日をたのしく生きていくためにどうしたらいいのか?そのために手段として起業という方法を選ぶこと。考え方の順番を間違ってはいけません。
さらにできるだけお金をかけずに起業を考えること。これまでの経験と人のつながりを生かしてできることはないのか?自分自身を商品にすることはできないのか?
箱をつくることばかりに目を向けないことです。そして準備がスタートしたら、起業前にお客さまをどう集めていくかに注力することが最重要なテーマになってきます。
シゴトづくりを成功へ導く3つの資質
起業して成功するために必須の3つの資質があります。「素直」「謙虚」「行動」です。特に50代以降の人は意識してください。
なぜなら50代にはこれまでのプライドが邪魔をするからです。50代と言えば会社でそれなりのポジションを経験してきた身。社外に出ても会社での立場が切り離せないのが原因です。
どうしたら今までのプライドをはずせるのか?そのお手本になるような事例を共有します。
先日50代のAさんからモヤモヤ相談の申込がありました。申込をいただくと事務局から詳細のご案内をメールで連絡します。実はこの段階から相手の姿勢がおおよそ見当がつきます。メールでのやりとりでこれまでどういうふうに仕事をしてきたかも見えてきます。
Aさんは事務局とのメールのやりとりがいたって丁寧でした。なかには案内に対して何の返信すらない人もいます。メールも相手とのコミュニケーション。些細なことと感じるかもしれません。でもここでキャッチボールができない人は既に自分で事業をやる土俵にも乗れていないということになります。
そして当日。チャイムが鳴りドアを開けました。「本日面談の予約をさせていただいている◯◯と申します」「雨の中ありがとうございます」「いえこちらこそお忙しい中貴重なお時間をとっていただきありがとうございます」深々と頭を下げてもらいました。恐縮しました。
ひと通り相談を受けている間。自分のノートに一生懸命メモをとっています。面談ではこちらでまとめたものを書いています。通常はそれをもらえればいいという感じでメモをとる人はあまりいません。Aさんは違っていました。一つひとつを聴き洩らさないでおこうという強い姿勢を感じました。
実は今マクドナルドでアルバイトをしています。なぜマクドナルドなのか?それは自分に課せてみようと思ったからです。マクドナルドには正社員がほとんどいません。アルバイト先輩から教わることになります。先輩アルバイトの高校生の話が素直に聴けないようなら起業なんてできない、そう思いました。最近では高校生や主婦の先輩にうまくできるようになったねとほめてもらっています笑
Aさんは帰り際こんな話をしてくれました。早期退職をしてしばらく家にいた後、このままではいけないとバイトを始めたとのこと。50歳を過ぎて自分の子供のような人を相手にそうそうできることではありません。
自分の人生へかけるAさんの覚悟を感じました。「今日は踏み出すエネルギーをいただくことができました。本当にありがとうございました」ドアの外で深々と頭を下げてくださいました。
起業は技術だけでうまくいくような代物ではありません。「素直」「謙虚」「行動」。3つの言葉が表すもの。つまりその人の人間的魅力が土台になります。
まとめ
早期退職を中心に書いてきました。何より大切なことは「これからどう生きていきたいのか」「自分はどうありたいのか」です。根っこになることを考えずに、目の前の手段だけで判断すると後々大変な後悔をすることになります。
いったん立ち止まって、これからの人生をじっくり考えてください。そして大まかに進みたい方向が決まったらいち早く準備に入ることです。決して手遅れにならないように。