「天職ってどうやって見つけるの?」「天職の探し方を教えてください」こんな話を耳にする。書店に行って「天職の見つけ方」といった本が気になるときがあるかもしれません。実はそう考えること自体を改めましょう。天職はある日どこからか降ってくるものではありません。受け身でいても何も変わりません。自分自身の手で創り出すもの。
天職とは何か?どうやってつくっていくのか?10年にわたり運営してきた働き方多様化を実践するするコミュニティからわかったことをまとめました。
働き方視点でみる天職の意味
天職とは何でしょう?結論から言うと「ずっと続けていける仕事」のことをいいます。そのためには心からたのしいと思えることが大事。なぜなら毎日がたのしいと思って生きていけることがシンプルに大切だからです。毎日の生活の中で仕事の占めるウエイトは高いですよね。人生を歩む上で仕事は切ってもきれない存在です。であれば仕事そのものがたのしいことがベストです。
「天から与えられた職務の意。その人の性質・能力にふさわしい職業。本人に適性があり、かつ本人が意欲を持って取り組むことのできる職業」辞書にはこんな意味が記されています。本人の適性って何でしょう?何でもって適性があるというのでしょう?
あらかじめ決められた適性なんてありません。適性というよりそのことをワクワク感をもって取り組めるかの方が大切。ワクワク感があれば継続できるしやりながら覚えていくこともできます。ワクワク感があるから新しいこともどんどん吸収できます。天職という言葉のもつ本当の意味を働き方から見ていくことから始めてください。
適職さがしと混同しない
天職を見つけるためにどうしたらいいのでしょう?一度世の中にある職種を総ざらいしてみよう。総ざらいしてみたけどなかなか自分にぴったり合うものがない・・・こんなことを繰り返しても堂々めぐりするだけ。すでにある職種に自分をはめ込もうとしているのが原因です。これを適職さがしと言います。適職さがしから天職を見つけることはできません。
天職とは、本人に適性がありかつ本人が意欲を持って取り組むことのできる職業という上述の解釈。適性や意欲が持てるという表現を見て感じることはありませんか?どこか他力本願に思えないですか?他人に委ねたところで自分が進む道は決まりません。
自分の中にあるわくわく感は何なのか?自分にとっての仕事の意味とは何なのか?自分だけの個性、自分らしさはどんなところにあるのか?人生を振り返って自分自身をしっかり掘り下げてみる。そこから天職を形づくる原点が見つかります。
いつか天職と出会える日が来ないかなあ・・・もしこんなことを考えているとしたら、いつまで経っても現状のままです。今を変えたいのなら自分で考え自分で行動する。小さなことで十分。小さな一歩を踏み出そうという気持ちが天職をつくる原動力になります。
天職になる仕事の糸口をつかむ方法
「天職は自分の手で創り出す・・・そう言われても何から手をつけたらいいんだろう?」そう感じるかもしれません。そこで最初に天職の糸口をつかむ方法を共有していきます。まずこの質問を深く考えてみてください。
「あなたがこれまでの人生の中で”たのしかったこと”は何ですか?3つ挙げてみてください。そしてその”理由”を挙げてみてください」
どちらも頭の中で考えるのではなく、紙に書き出してください。頭の中だけで考えていてもモヤモヤするだけ。思っていることを文字にして見える形にすること。できたら声に出して読んでみること。そこで初めて脳が認識します。
例えばこんな感じ。たのしかったこと三つ。一つ目は小学2年生のとき。家の近所の病院の裏庭に穴を堀った経験がある。よくいう秘密基地づくり。友だち3人と長靴型に穴を掘った。途中でカブトムシの幼虫が出てきて驚いたり・・・新しい発見の連続だった。今でも鮮明にたのしかった映像が浮かんでくる。
二つ目に学生時代。野外活動研究会の仲間と一緒に日本全国をキャンプや野宿をしてまわっていた。年に何十回は行っていた。その費用を稼ぐためにアルバイトをやっていたようなものだ。北海道の北の果て稚内ステーションホテル(駅前で野宿すること)は今でも良い思い出として残っている。
三つ目はサラリーマン時代の30代。プロジェクトを立ち上げ100人を超えるチームメンバーとゼロからイチをつくっていったこと。寝食を忘れて朝から晩まで仕事をした。やりがいと誇りに満ちた数年間だった。
次にそれぞれなぜたのしかったのかの「理由」を掘り下げてみます。するとこんなものが出てきます。「ゼロからつくりだせたこと」「自分で決められたこと」「気の置けない仲間がいたこと」「自然がからんでいること」。
これらに共通するキーワードを書き出します。それが満たさせることを仕事にできたらこの上ないしあわせになります。ちなみにここでの例は僕自身のもの。今その共通キーワードへ向けた仕事を進行しています。だから最高のワクワク感の中にいて、これぞ自分の天職という実感を持てているわけです。
こんなふうにあなたの人生を振り返って、たのしかったこととその理由を書き出してください。理由に共通するキーワードから天職につながる糸口を見つけることができます。
どうありたいかが先、天職は手段
・時間を自由にコントロールできる。・子供たちに誇れる仕事をしている。・自分が納得している仕事。・自分の決定で働いている。・自分の会社で自分で方向を決めて進んでいる。・信頼できる人と仕事をしている。・お互いを認め合え、助け合える仲間がいる。・忙しくてもやりがいをもって時間を忘れたのしく働く。
・時間的にも経済的にも不安がない状態。・自分のありたい姿を意識し、自己認識の中で毎日を送る。・自分の決めた領域でビジネスを起こし、より世の中に貢献できるよう突き進む。・経営者として心から熱中できる仕事に週末も没頭している。
・心から楽しいと思える仕事をしている。・自分で仕事を創りだしている。・人と向き合う仕事をし、自分も周りも幸せでいる。・人に感動を与えられる仕事をしている。・豊かな心とわくわく感を持って毎日過ごす。・自分の努力が自分に跳ね返ってくる仕事。
・会社の利益だけでなく社会にも貢献できる考え方で行動する。・会社勤めの人間関係の煩わしさはなく心身共に充実している。・常に楽しさワクワクを感じることができる仕事。・人の夢をかなえる仕事。・人生を前向きに生きるお手伝いをする仕事。
「毎日をたのしく生きること」目標はシンプルです。そのためには仕事そのものがたのしくないとはじまりません。毎日がワクワクできる仕事、それが天職です。あなたは起業した先にどんな人生をつくっていきたいですか?天職を見つけるのが目的ではありません。
生き方はこうありたい。これからどうしていきたいのか?将来どうありたいのか?あなたのあり方を実現する天職は何なのか?目的と手段を混同しないように注意しましょう。
天職という言葉を意識することの大切さ
仕事や働き方に対して不安、不満、疑問がないときは気にならないもの。でも何かカベにあたったときに「自分にとっての天職とはどんな仕事なのか?」そんなことを思い始めるものです。例えばこんな感じです。
今の会社で長い間一生懸命やってきた。会社のため、お客さまのため、お客さまのため必死で考え行動してきた。でも会社の考え方ややり方と合わなくなった。たのしいという気持ちがなくなってしまった。
今はどちらかというと、やってきたこと、やれることの中から仕事を当てはめている感じ。しっくりきていないのでいまいち動き出すエネルギーが湧いてこない。焦りのみが募る。天職と言えるものを見つけ、確信を持って前へ進みたい。
もどかしい、悩ましい思いです。でもそう思えることはとても大切なことです。何の疑問もなく平々凡々と毎日を送っていても日常は過ぎていきます。変化があることで人は成長します。働き方のカベに当たることは成長への一歩と認識してください。待ってました!という感じで。
天職を見つけるキッカケとなる相談事例
働き方モヤモヤ相談カフェには、漠然と働き方を変えたいけどどうしたらいいの?そんなモヤモヤ状態にいる人が日々相談に訪れていただきます。その日は現在パン屋さんに勤めていて自分でパン屋を開業したい人がいらs者いました。
パンを作ってます。パン屋をやりたいんです。でも毎日本当に忙しくて・・・何からはじめたらいいかわからないんです・・・
勤めるパン屋は高級住宅街にある有名なお店。修行の意味もあって数年間そこで毎日仕事をしています。朝3時から夜12時まで。休みは週1回あるかないかという劣悪な環境。でも今ここで投げ出すわけにはいかない。そんな中、開業へ向けて小さな一歩を踏み出したい。その一心を言葉をかみしめながら話をしていただきました。
その人から相談後日、一本のメールが届きました。
三宅さん、お疲れ様です。先日は予定よりも遅い時間までありがとうございました。こうしたい、ああしたいと思いつつも日々の作業に追われ、なかなか進むことができない苛立ちや焦りもあり、自分は如何すべきかを見失いそうになることもありますが、昨日のように自分の想いを聴いていただくことによってがんばろうと思う気持ちが出てくることも感じましたし、自分の気持ちも楽になった気がします。
とにかくオーナーにもしっかりと自分の想い、進みたい方向を伝えようと思います。結果はどうなるかわかりませんが、自分の人生なので乗り越えたいと思います。ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。PS 鞄の中に三宅さんの本とパンの本を入れて頑張ります。
とっても誠実であったかい人柄。誰よりも美味しいパンにかける思い。苦労を重ねて今がある。これぞ天職。心から応援してあげたい、心が奮い立つとはこのことを言います。そんな想いにかられた一日でした。
天職とはどういうことかがわかる体験談
知り合いの現役起業家に「起業して良かったこと」をインタビューしました。この中に天職というキーワードのヒントが隠されています。やはり体験談に勝るものはありません。
今はとにかくしあわせ。満員の通勤電車に乗らなくていいようなことも小さいけど大きなこと。気の合う人と気の合う分だけ仕事を膨らませていける。やりたい仕事も選べる。サラリーマン時代にお伺いを立てていたのとは正反対。自由に仕事ができることが何より。
自分の時間で仕事ができること。収入も雇われ時代の2~3倍に増え余裕をもった生活ができている。本を出版しメディアにも出演させてもらった。好きなお客さんと好きなことで仕事ができてたのしい毎日
良いことばかり言っているように見えるかもしれません。実際は、この裏側に日々収入をつくるという大きなプレッシャーを感じながら動いている姿があります。収入をつくっていくのは並大抵のことではありません。でもそれとは全く別の次元で毎日をワクワクしながらたのしんでいます。
なぜこんな状態になったのか?それは全て自分で決めて自分で動いているから。他力本願なんて発想はカケラもありません。たのしいと思える仕事は自分がたのしいと思えるようにつくる。ゼロから自分だけの仕事を創り出していく。世の中にある仕事にはめ込もうなんて思わない。はめ込んだ瞬間にどこかで必ずほころびを起こすことになります。
自分でシゴトを創り出すことを実感する
「三宅さん、実際自分でやってみてどうですか?」「サラリーマンのときと比べてどうですか?」たくさんの人から質問を受けます。迷うことなく答えます。「自律してサラリーマン時代の100倍たのしくなりました」と。
どういう点がそうなのか?仕事としてはもちろんですがそれだけではありません。人生がそのものが豊かになりました。他力本願の人生を続けていたら絶対後悔していたでしょう。会社以外の世界を知らずして定年を迎える、会社一筋の人生、家族との接点も少ない、そんな映像を想像するだけでゾッとします。
大手企業にいた頃。会社の中で起こっていることがすべてでした。それだけで世の中のことを全部わかっている気になっていました。でもそれは大きな間違いでした。一歩会社の外に足を踏み出すと知らないことがたくさんありました。それまで会ったことがないようないろんな人がいることも知りました。どれだけが自分が井の中の蛙だったかを思い知らされました。
当時は猛烈サラリーマンでした。いつも仕事のことを考えていました。始終考えていたのである日アイデアが浮かんできます。浮かんだらすぐに実行に移したい性格。でも組織の中ではそうはいきません。どんなに正しいことでも実行に移せないことばかり。ストレスでした。
自分でやり始めたらどうなったのか。明け方寝ているときにハッとアイデアが浮かんでくる。思いつくと頭の中が熱くなってきて寝てなんていられなくなる。するとパジャマのままパソコンに向かう。浮かんだアイデアをWEBに追加する。コラムを情報発信する。こんなふうにすぐ実践に移す毎日。
人とのつながりが変わりました。会社でのつながりは会社の中だけのものでありません。肩書きあっての自分です。飲みに行っても会社や上司の愚痴ばかり。そのときはそれでいいと思っていました。でもそんなことを繰り返しがどれだけ虚しいものかを知ることになりました。
起業してご縁のあった人たち。年齢も性別も過去の経験もすべて違う人。利害関係でなく人として付き合うということ。人の尊さは自分でやらないと絶対わからなかったことです。
自分がやりたいことを自分が思った通りにすぐ形にできる。こんなわかりやすいことはありません。「プライスレスの人生」と言います。天職とはプライスレスの人生を得るための手段。口を開けて待っていても何も変わることはありません。自らの手で仕事を創り出していくことが天職をつくる唯一の方法です。
自分の手で天職を創り出そう
自分の強みは何だろう?自分に合う仕事って何だろう?その先には誰かがいつか何かを与えてくれるという願望があります。自分にとっての天職は誰かが教えてくれるものだと思っています。それでは本当の天職なんて見つかるはずはありません。
一生涯かけてずっとやっていきたいと思える仕事。ずっとと思えるのは自分自身の意志でしかありません。これをやっていきたいという情熱は自分の中から湧き出してくるもの。天職の本当の意味を間違わないように。そしてその意味がわかったら次は自分で創り出すステップに進んでいってください。