働き方

仕事をすることの意味|本当の顧客サービス身近な実例

顧客サービスとはお客さまの不を解消することです。俗に言われることですね。でもそのことを本当の意味で実践できている人はあまりいません。真の顧客サービスとは何でしょうか?実際にあった身近な事例2つを比べて整理してみます。

2人の医師の場合

流れ作業の医師

1週間前から腕と背中が痛くなりました。特に変わったことをやったわけでもありません。シップや塗り薬で様子をみたが一向に良くなりません。やむを得ず近所にある整形外科に行きました。すると初診で3時間近く待たされて診察室に。症状を言うと手をいろんな方向に回してどの時に痛いのかを確認しました。

「これは首ですね」(そこだけでいいという断言口調)
「あ、腕の方が痛いんですけど」(今困っている腕はどうなるの???)
「じゃあ両方撮っておきましょう」(いい加減だなあ・・・)

そう言って待合室に戻ります。しばらくしてレントゲン撮影をしました。また待った後、診断で呼ばれました。「頚椎椎間板ヘルニアですね」といって目の前にある首の骨の模型で「ここが減っています」と説明しはじめた。病名を告げると同時に看護師からそれを書いたページのコピーを1枚渡されました。かなり露骨でした。

「腕は石灰沈着性腱板炎(たぶんそう言ったと思う)です。ここに石灰がたまっているので痛みになります」と説明。早口で言うので病名が何だったのか聞き取りづらい状況でした。「1週間分、薬を出すので様子をみてください」これだけで説明は終わりました。

「原因は何ですか?」と訊くと、いきなり表情を変えて「今説明したことが原因です!」と荒い口調で答えます。「あ、そういうことではなくて病気になった原因です」と言い直しました。すると「加齢が原因です」で終わり。これ以上、この医者とはやりとりできないと断念することにしました。

処方箋で薬をもらいました。すると「病気そのものを治すものではなく、病気によるいろいろな症状や苦痛をやわらげる薬です」と書いてありました。「はあ?」と思ってしまいました。こんなの飲んでて治るの?疑心暗鬼にもなりました。また別の病院に行っている時間もないのでとりあえず様子をみることにしました。

どちらの病名も僕にとっては初めて聞くもの。特に2つ目にいたってはその場でメモをとらないとわからなくなるようなものでした。慌てて外に出たときうる覚えで検索してみました。患者はわからないことで不安だらけです。本来そのことを解消するのが医者の務めではないでしょうか。それがプロというものだと思います。

毎日患者の面倒をみて同じような病気で自分にとっては流れ作業かもしれません。でも患者一人ひとりにとっては重大な局面。ないがしろにされている感が満載でした。その時その時で相手と向き合うことがどれだけ大切なことか実体験をもって知らされました。日々に流されるとこの医者のようになってしまいます。自戒を含め反面教師として毎日に臨みたいと感じました。

目の前の患者と向き合う医師

その後、まったく症状が改善しないので、いろいろと調べ別の病院に行くことにしました。

「どうされましたか?」医師は柔和な表情で話しやすい感じです。「2週間前から肩と背中が痛くなりました。なかなか痛みがとれないので近所の整形外科に行きました。こんな診断を下されました。薬はこれです。でも一向に快方に向かいません。良くなるどころか悪化している感じです。そこで伺った次第です」これまでの経緯を説明した。

「レントゲン写真はお持ちですか?」「あ、ないのですが・・・」「あればそれで良かったのですが。ではもう一度調べますか?」「はいお願いします」いきなり撮影すると言いません。レントゲンを撮影するのも利益の一環ではないのでしょうか?

「じゃあ両腕を挙げてみてください」「これ痛いですか?」「はい」「なるほど。次はこんな姿勢をとってください。これ痛いですか?」「はい」まさにツボをおさえた感じ。神の手のように僕が痛いところがわかっているような気さえしました。

レントゲン室へ向かいます。「いつ頃からですか?」「この姿勢だと痛いですね?」合間合間で技師が声掛けしてきます。いろんな姿勢でたくさんの写真を撮りました。前に行った病院では通り一遍の撮影という感じでした。ここが痛いんだけどちゃんと撮ってくれてるの?そんな不安が募りました。今回はまさに痛みの部分に集中して撮影する感覚でした。同じレントゲン撮影でもこれだけ違うものなのかと実感しました。

撮影を終えるとすぐに診察室に呼ばれました。写真を大きく拡大しながら医師の説明が始まります。「頸椎という骨があります。こんな形でこういう役割を果たしています。普通は骨と骨の間に軟骨があります。見てもらったらわかるように何もないですね。これは少し前からそうだったものと思われます」

「三宅さんの場合、この4つ目と5つ目の部分が特に顕著です。ここからの神経が右手のこの指につながっています。支障が出たらしびれが出ます」「あ、ほんとだ。ここがしびれている」「同じ姿勢を続けるとかできるだけしないように。首のストレッチをするとか向きを変えて回してみるとかを意識する必要があります」

「肩はこの部分が石灰化しています。わかりますか?」「あ、はい」「肩の骨はこういう構造になっています。ここを司る筋肉と骨の間で炎症が出ています。まずは炎症をとることが先決です」「こういう姿勢をとるとまた炎症が出るのでしないようにしましょう」「炎症がとれたらインナーマッスルという筋肉を鍛える必要があります」

的確に専門家目線でわかりやすい説明。「ここまでいいですか?」と確認しながら話を進めてくれるのでついていけました。不安が渦巻く中でそこが知りたい!のポイントをレクチャーしてくれました。今自分の身体がどんな状況かが手にとるように理解できました。

「おそらく以前の病院であったように頸椎ヘルニアとかそんな類だと思います。ただレントゲンだけでは断定できません。病名なんてどうでもいいです。原因はこれなので次からはここに注意していってください・・・」病名なんてどうでもいい、要はこれからどうしたらいいのか?ここが一番知りたかった。まさにそこをピンポイントで伝えてくれました。

「痛みがひいたらあとは運動療法です。インナーマッスルを鍛えてください。それにはトレーニング方法があります。ご近所の整形外科に行けば教えてもらえます」「えっ?自分のところでやらないの?」と思ってしまいました。

という以前に近所の病院へ行こうなんて気はさらさらありません。「こちらでお願いすることは可能ですか?とっても丁寧にわかりやすく教えていただけたので」「笑 もちろん大丈夫ですよ。でもご近所の方が近くて便利ですよね」

病院といえども経営していることに何ら変わりはありません。今こうして目の前にお客さまが言ってみればリピート客になろうとしているわけです。でもこの医師は自分のところの話をしませんでした。患者にとって最良の方法を選んでくれたのです。

診察室からは医師と看護師の和やな笑い声が聞こえてきます。待合室ではリハビリ担当の医師が患者の横に座って親切にスケジュールの説明をしています。一様に看護師はやさしく丁寧に気配りしながら応対してくれます。職場にもそんな空気感があふれていました。

まさにプロ中のプロ。前回行った医師が対極にあった分、その価値を高さを余計に感じました。長期間痛みがとれず心身ともに少々ふさぎ込んでいました。身体が思うようにならず仕事でもストレスを抱えていました。そんな中だけに感動し目頭が熱くなる思いでした。

顧客目線で仕事をすることの真髄とは何か?能書きはいくらでも言えます。本当にその人のことを思えているのか?自分自身が顧客として困り不安を感じた体験をもとにどうあるべきかを学ぶ最高の機会に恵まれました。この気持ちを忘れずに仕事に携わっていきたいです。

2人のディーラーの場合

エンドユーザーと企業をつなぐ営業マン。ある意味の会社の顔になる存在です。営業とは何か?その先の仕事とはどういうことなのか?働く人の気持ちはどこにあるのか?身近にあった事例をもとにその答えを導き出してみます。

急成長する会社の裏側

事業の関係で車の乗りかえを検討していました。とある買取業者に行った日の話です。商談が終わって店を出ようとしたときのこと。「すみません。報告があるので少しお待ちいただいていいですか?」営業マンは言いました。事務所の一番奥でパソコン画面に隠れるようにして座っている店長のところに行って報告をしていました。店長は思い切りしかめっ面をして何やら営業マンに指示を出しています。正確に聞こえませんでしたが、おそらく「お前何やってんだ。その場で売らないでどうする!」的なことを言っているのがわかりました。

この間僕らは待たされていました。報告なんてお客さんを返した後にするのが普通でしょう。加えて部下に対するあの態度は何だ?かなり印象を悪くしました。そして翌日。約束通り店舗に行くと担当の営業マンがいません。「申し訳ありません。◯◯は営業で外出しています」店番をしている女性スタッフが言いました。「はあ?」という感じ。約束したのに不在。あり得ない話です。極めつけはまたしても店長の態度。僕とのやりとりを女性スタッフが逐一報告しに行きます。またしてもしかめっ面。ああしろこうしろと指示を出していました。

初日の店長の態度でもうやめようとも思いました。ただ買取価格が破格だったので我慢して翌日も行くことにしました。でも2日目のやりとりでこの店舗には二度行かないことにしました。その後、営業マンから電話があったので理由もはっきり伝えました。

お客さまのいる前でやった行為。部下に対する姿勢。店舗の中の空気感。いずれをとっても最悪。そもそも店舗を訪れたとき「いらっしゃいませ」のひと言さえ言えないのは何なのか?きっとこの店長のカラーが店舗に充満しているからでしょう。

1日目営業マンが熱心に語った話の中で気になるものが話がありました。「車は価格勝負オンリーです。どこよりも高い価格を出すために弊社にはこんな仕組みがあります。毎日のように車を右から左へ流している感じです・・・」この話を聴いたとき、うん?と引っかかりました。車を何だと思っているんだ?疑問を感じました。買い手にとっての車とは思い出そのもの。家族とともにたくさんのページを重ねてきたものです。それを右から左へ流せばいいという言い方に違和感を感じました。目の前のお客を商品と思え!的な空気を感じてしまったのです。

この会社、業界ではかなりの急成長を遂げているようです。都心の有名ビルに本社を構えトップシェアを狙うところまで来ているとのこと。名刺にも販売No1というフレーズがうたってあります。店舗展開もどんどん増やしています。現に訪問した店舗も新しい出店でした。今回わかったことがあります。会社が急成長する裏側には必ず弊害があります。それがお客さま不在の経営だったとしたら・・・会社とそこに勤める社員の未来はとんでもないことにつながります。

本当の仕事とは何なのか?そこで働く人の思いはどこにあるのか?その人の思いを無視して仕事は成立しません。改めてその重要性を再認識させられる出来事でした。

相手の立場で考える営業マン

車の乗り換え検討は続きました。事業を動かすのに現在のミニバンでは装備のおさまりがつかなくなったのが理由です。そこで商用のハイエースに矛先を立てました。このクラスでは圧倒的な人気車。まずは残債の残る今の車の査定ありきです。

ネットでひと通りチェックした後、まずはどんな種類、価格帯なのかを知るためにトヨタのディーラーへ向かいました。閉店間際でしたが、30代前半の営業マンは丁寧に応対してくれました。その場で早速査定。その日は相手先の営業が終わっていたので翌日に再訪問しました。

新車での見積り価格と査定の結果を提示されました。車両はそれなりの価格。査定は残債が消える程度を希望していたがかけ離れた結果になっていました。「これきびしいですねー」と伝えます。「そうですよねー」と営業マン。考えたあげくこう切り出してきました。

「大きな声では言えませんが・・・うちで査定をやると低めのものしか出ません。一度買取業者にも行かれた方がいいです」「そうなんですね。どこか良い業者ご存知ですか?」「はい。◯◯社が良いかと思います。先日商談させていただいてお客さまにご紹介したら30万円近く高値がついたみたいです。結局商談は負けたんですけど笑」

このやりとりに驚きました。普通は自社ですべてを完了させクロージングまでもっていきたいのが営業の気持ちです。でも彼はお客さまの立場に立って最良の選択を提示してきました。彼の営業姿勢に心が動かされました。実際に買取業者で査定をすると40万円近くの高値がついた。びっくりです。結局、納期の問題がネックになって前には進まなかったが印象に残る営業マンの姿勢でした。

その後、十何年来付き合いのある日産へ向かいました。ハイエースしか視野になかったので日産は付き合い上挨拶に行くだけのつもりでした。事情をすべて話し、最初は今の車を軽自動車に乗り換えたらどうなるか?など相談しました。展示車で説明してくれた後、試乗車にも乗せてくれました。

「せっかくなのでうちのこれもご覧になってください」営業マンは日産のハイエースクラスの車を紹介しました。まったく眼中になかったが一応見ることに。ここで一緒に行った妻の様子が変わりました。「コストのことを考えても検討に入れてみてはどうかな?」少し気持ちが動きました。

席に戻りカタログを見ていると特別仕様車が目に飛び込んできました。「これならいいかも・・・」と感じました。すると「ちょうど今試乗車があるのでご覧になりますか?」と営業マン。実車を見て以前にも増して充実しているのがわかりました。その間に営業マンは見積りをつくっていました。「ぴったりご予算前後になりましたよ」見積書を見ると商談中に話した予算にぎりぎりハマっていました。心は決まりました。「じゃあお願いします」正直、車の内容だけならハイエースも捨て切れませんでした。最後の決定打は営業マンの人として姿勢でした。

最初は軽、その後ワンボックス、こちらの言うことは二転三転しました。そのときそのときで相手が言っていることをしっかり受け止め、最善の方法は何かを一緒に考えてくれました。「◯◯さんは相手の立場をしっかり理解して提案してくれているよね」妻は言いました。自分が売りたいものへ導くために作戦を立てて動かしていくような営業とは真逆の世界にいます。

ローン契約書を書いているとき、マンションの居住年数を書く欄があった。「何年だったっけ?」「どうだったかな?」夫婦でそんなやりとりをしていました。すると「僕が会社に入って2年目に三宅さんとお付き合いが始まったので今年で15年ではないでしょうか?」と営業マン。そんなに頻度高く会っているわけではありません。なのに相手のことがわかっていることに驚きました。

「ナンバープレート、どうしますか?」営業マンは訊いてきました。妻は「あ、ずっと使っているナンバーでお願いしたいです」と答えました。「でも余分にお金が要るんですよね?」と僕。「あ、もう見積りに入れていますから大丈夫ですよ笑」と営業マン。オリジナルナンバーは結婚記念日。彼はきっとこのことを憶えていたのでしょう。これぞ真の営業マン。彼と過ごした商談が大切なことを教えてくれました。

メガネフレームの場合

お気に入りのメガネフレームをつくるブランドがあります。たまに行くショッピングセンターにそのブランドの専門店があるので行ってみることに。そこには予想通り多彩なフレームが置いてありました。でもメガネ屋さんではないので作ってくれるか否かはわかりません。近くにいたスタッフの方に訊いてみました。

「これってメガネも作ってもらえるんですか?」

(スタッフ)「はい、できます。ただ制約があってお客さまの度数だとレンズが厚くなってしまいます」

「そうなんですね(残念)。フレームだけ買ってメガネ屋さんで作ってもらうことってできないんですかね?」

(スタッフ)「はい、できますよ。差し支えなかったら、今のメガネ、どちらのお店でご購入になったか教えていただけませんか?」

「△△でした。お店の名前はなんだっけな?・・・」

「あ、○○さん(ショップの名前)ではないですか?」

「そうです、そうです!そのお店でした」

(スタッフ)「そちらのお店ならきっとやってくれると思いますよ。ちなみに○○さんならこのモールにも入っていますよ」

「えっ?そうなんですか?じゃあ今から行って訊いてみます」

(スタッフ)「はい。お店はこの道順でここです」

「ありがとうございます!」

近くのメガネ屋さんに行って訊くとフレームの形によってできるとのこと。すぐさま専門店に戻ってそのことを伝えました。

(スタッフ)「わかりました。じゃあ○○さんに確認してみますね」と言ってその場で電話を掛けてくれました。
しばらくして(スタッフ)「できるそうです!」

「そうですか!じゃあフレームこれでお願いします!」

その後、購入したフレームをメガネ屋さんに持ち込み、お気に入りのメガネが出来上がることになりました。「次回もここで買おう」一度にそのスタッフそしてそのお店のファンになってしまいました。

普通なら何とかその場で売ろう、売ろうというのがお店にありがちなこと。面倒でできないことはできないと言ってしまいがちです。でもスタッフさんにはそんな雰囲気が微塵もありませんでした。僕が求めていること、知りたいことをしっかり聴き、その上で専門家としてアドバイスをする・・・まさにそんなイメージです。

お客さまにとってベストの選択は何なのか?そのために自分ができることのベストを尽くす。そんな気構えを感じました。これって、口で言うのは簡単、でも実行するのは難しいことですよね。

生き方にモヤモヤしたら、全国どこからでもご自宅からお気軽に