身の丈起業を志すのなら徹底的にニッチにこだわれ。これが鉄則だ。「そんなことやってご飯が食べられるのですか?」「常識では考えられないですねー」周囲にこんなふうに言われるものこそ最適だ。「ニッチでオンリーワン」「徹底してとんがる」がキーワード。この言葉の意味を考えてみたい。
みんなが気づいていたことを形にする
先日カンブリア宮殿でその事例になるものが放送されていた。モンテン社が展開する「おなかすいた」。ひと目で覚えられるわかりやすいネーミング。「安い・新鮮・美味い」で主婦が殺到する人気店だ。野菜やここでしか売っていないものを全国から集めた店舗。新鮮な野菜をスーパー価格の2~3割引きで販売している。陳列にもこだわりがある。ただ平面に並べるだけでなく上下空間を利用してたのしさワクワク感を演出。内装が外部に出すのでなく自前社員でやっているというのも特長だ。そんな店舗で主婦層は買物カゴにあふれんばかりどっさり野菜を買っていく。
これまでスーパーの店頭に並んでいる野菜がどんな経路で何日かけているのかはブラックボックスだった。ここに目をつけた。品揃えははずし新鮮さにこだわった。市場でその日旬で売れそうな野菜だけを仕入れる。店舗には冷蔵庫を置いていない。その日のうちに野菜を全て売り切ってしまわないといけない。常に新鮮な野菜が並ぶ裏舞台だ。
今でこそ急成長のモンテンだが道のりは険しかった。代表は父親の会社の巨額の借金を返済するために世の中で流行っているもの、儲かりそうなものに片っ端から手をつけた。でもその全てにことごとく失敗した。こうした失敗があったから今の視点を持つようになった。自信の裏打ちがここにある。
「新鮮な野菜をより安く」ちょっと考えてみれば当たり前のことをやっているように見える。「そんなのみんな気がついていたことじゃない」誰もがそう思う。でも感じたことを誰よりも先にカタチにすること。ここに最大の価値がある。口だけなら誰でも言える。重要なことは実行に移せているか否かだ。
徹底して「個人」をイメージする
もう一つがお客さまの想定が具体的なこと。おなかすいたの顧客ターゲットは「63歳小百合さん」だ。63歳ご主人子供2人。ご主人は元上場企業の部長で定年。上の子供は31歳で所帯持ち。下の子供は26歳で同居。趣味は旅行。吉永小百合さんをイメージしている。社長自らこうした内容を即座に口にする。現に来店客の中心層は63歳小百合さんになっていた。
徹底的に「個人」をイメージしてその周辺にいる人へ拡げていく。自分サイズ起業はまさにこの考えにもとづいて展開していくのが鉄則。お客さまを絞り過ぎると市場自体がなくなってしまうのでは?と心配になるかもしれない。むしろ逆だ。これだけ個々のニーズが多様化した日本では個人がどんな気持ちでいるかにフォーカスしないといけない。ピンポイントに当たればそこからお客さまは拡がる。
流行ではなく、ずっと続いていけること
もう一つが流行っている、儲かりそうで飛びつかないこと。お金だけで続けていけると思うだろうか?ビジネスは「ずっと」続いてこそ価値がある。お客さまからありがとうの言葉をもらうことがその原動力になる。一時の流行に惑わされてはいけない。長持ちビジネスを目指していこう。
人としてとんがる
起業したら「とんがる」ことが必要だ。とんがるとは他にないことをするということ。「それって何?」「変わったことしているよね」こんな話をすると「とんがるって人と違うことでしょ?自分にはそんな特別なものはないし、特技もないし、これといった取り柄もないし・・・できそうにないなあ・・・」と思ってしまう。どうしたらとんがれるのか?
想像してみてほしい。フィットネスジムが二つあったとする。どちらも通うには同じような距離にある。ホームページをみた限り、レッスン内容もほぼ同じ。価格も大差なし。こんなときあなたはどちらのジムを選ぼうと思うだろうか?その時選んだモノサシは何になっただろうか?
「三宅さんの経歴を見ました。マイナスの山が多かった。世の中の人はみんな良いことしか言わないですよね?そんな中にあって自分の負の話をさらけ出しているのをみて、親近感というか共感というか信用できるなと思って来ました・・・」
先日モヤモヤ相談に参加いただいた方のコメントだ。起業コンサルタントと呼ばれる人は世の中に星の数ほどいる。インターネットで検索するといろんな情報、セミナー、起業塾などが出てくる。中には胡散臭いものも多々ある。そんな中どこへ行こうかを選ぶのは大変だ。今回選んでいただいた理由は「この人なら信用できそうと感じた」というものだった。
この話の背景にあるものが何かを考えてみてほしい。起業が成功するノウハウを教えてくれそうとか知識が学べそうとかそういう種類のものではないはず。商品サービスの中身ではなくそれを提供する側がどんな人なのかが重要になる。とんがるを決める要素がここにある。
とんがるとは決して商品サービスで差別化しようという話ではない。お客さまから「選んでいただける理由」をつくることだ。「この人だからお願いしよう!」お客さまにそう思ってもらえること。そこには「人としてどうあるか」が基盤になる。起業家として一番必要な要件と言える。
仕事としてとんがる
とんがるための二つ目の視点。それはその分野には他にそんな人はいないとものをつくり上げること。違う視点でいうと「えっ?そんなことで仕事になるの?」と思わせるものを見つけいち早く名乗りを上げることだ。
「サバイバルワークスタイリスト」「ワインパソナリエ」「ポタ通プランナー」これらを見てどう感じただろうか?これはつい先日、自分サイズ起業家育成プログラムを修了したメンバーが始める仕事の肩書きだ。「えっ?それって何なの?」と思っただろう。それぞれに今まで世の中にありそうでなかった切り口で新たなビジネスをスタートする。ある意味新しい職業をつくる想いだ。
オンリーワンでナンバーワン
とんがるための大まかな手順はこうだ。顧客ターゲット、市場や分野。それぞれの視点で絞り込みをかけていく。イメージで言うと今自分が思うより2歩踏み込んで絞っていく感じだ。できるだけ狭くニッチに入ってそこで1番を狙う。狭いところなので早い段階で1番が取りやすい。「オンリーワンでナンバーワンになる」わけだ。
徹底してとんがる理由
なぜここまでとんがることが必要なのか?それには二つ理由がある。一つはビジネスとしての独自性を立てるためだ。独自性とは専門家になることを言う。専門家はその道のプロだ。「◯◯のことだったら自分」という地位を築くことだ。広い範囲で専門家になっても目立たない。
もう一つは、世の中の商品サービスの選択肢が膨大に増えているから。何かを買おうと思ったときどういう行動をとるだろうか?ネットで検索するだろう。するとあふれる情報に行き当たる。「あれもあるしこれもあるし・・・いったいどれを選んだらいいの?」そう感じてしまう。
その時「そのことだったら他を選ぶ必要はありません。私に頼んでください!」と言い切れるものをつくること。情報洪水の今、「このことだったらこの人に任せればいいんだ!」と思ってもらえること。「あなたをすかさず選んでもらうこと」がビジネス成功のキモになる。
身の丈起業はスモールビジネスだ。スモールビジネスは大手と同じことをしても意味がない。「えっ?そんなところで商売になるの?」「お客さんいないんじゃないの?」「でももしかしたらあったらいいなという狭いところだよね」こんなふうに言われるところで第一人者の地位をつくっていこう。
世の中にあるとんがった事例
日経MJ記事にとんがることを表したものがいくつか掲載されていた。(2016.6.12記事より引用)>「バルバッコア」「鍋ぞう」「モーモーパラダイス」など17の業態でレストランを運営するワンダーテーブル。「ちょい高」外食として売上は堅調。「トレンドは追わない。ニッチの中でトップになる」と社長は自信をもって話す。
>例えば鍋店はたくさんあるけど、しゃぶしゃぶ・すき焼きになるとぐっと少なくなる。その中でも野菜バーを備えている店なら絞り込まれる。コンビニと競争しても勝てるわけがありません。ハレの日の外食に特化した展開をしている。
>トレンドは追わない。チェーン経営には興味がない。規模拡大よりブランドの継続性を重視<している。トレンドの先読みではなく、専門性を突き詰めやり切ること。 >同社は10年に上場を廃止した。店舗網の拡大ではなく、店の特徴を強く打ち出すことに注力してきた。ブームや出店拡大に頼らずとも店の専門性と料理の品質を高めることで利益を継続的に出していくビジネスモデルが同社の強みだ。
まとめ:ホンモノ指向であること
専門性と商品の品質を高めるということはいわば「ホンモノ」指向ということ。起業して自分でビジネスを創っていくのなら「ホンモノ」の仕事をしていきたいですよね。ホンモノをわかってもらえるお客さまとだけたのしく仕事をしていく。「◯◯さんってその道の第一人者だよね!」こんなふうに言われてみたくないだろうか?これこそフリーエージェントが目指すところだ。