早期退職、役職定年、リストラ・・・50代は働き方を分岐点に差し掛かる年齢です。否応なしにその時期はやってきます。
「これまで会社一筋できたけど、セカンドライフは自分の手で人生を進んでいきたい」「独立起業といっても何ができるかわからないし」「声が掛かったときに手が挙げられるように準備は始めたい」
そんな思いにもかられてきます。自分の足で立つ、自律した人生を歩もうと考え始めたときに、多くの人が思うことがあります。実はそうではないのですね。本記事では誰もが思い込んでしまう共通点をリストアップしました。
知識が必要だと思う
「独立に必要な知識って何ですか?」「知識をしっかりつけてから起業したいと思います」こんな声をよく聞きます。では独立に必要な知識って何だと思いますか?
会社をつくる知識、税金の知識、財務の知識、事業計画の知識など頭に浮かんでくると思います。こうした知識を準備中に身につける必要があるのでしょうか?
結論から言います。独立に必要な知識は、経験しながら身につけていくのが早道です。サラリーマンをやっていると、ついつい頭でっかちになってしまいます。知識がないと前に進めない・・・そんな感覚です。
実際独立すると、本で読んだ知識、人から聞いた知識だけではほとんど役に立たないことがわかります。なぜならビジネス現場に則した知識ではないからです。経験の中からでしか本当に必要な知識は得られないものです。独立準備は知識をつけている時間があったらまず行動していきます。
自律した人生にはメンタルと技術の両輪が必要です。そのウエイトはメンタル7に対し技術が3です。一見、技術の方がウエイトが高いように感じていませんでしたか?実はそうではありません。
メンタルつまり精神力、モチベーションの方が重要になるわけです。モチベーションを上げていくには行動していくのが一番です。
商売をはじめるとお客さまとの直接の接点がはじまります。いろいろなやりとりが出ます。先方から質問も出ます。想像もできなかったこと、予期せず事態も起こります。
自分がやっている商売ですから発生した事象にそのつど自分で対応していかないといけません。今日問題が発生したら明日までに解決しないといけないといった場面にも遭遇します。
そのために必要な知識を勉強します。お客さまと直接対面していますから知識の吸収度合いもハンパではありません。実際の現場に則した知識とはこういうことを言います。
事業を継続させるために必要なことはお金を稼ぐ土台をつくることです。突き詰めれば集客がどれだけできるのかがすべてです。お客さまさえ集めることができていたら商いはまわります。
もし独立前に知識を得たいのなら集客のノウハウを学びましょう。特にインターネットを活用した集客方法です。ネット集客技術は絶対学んでおいてください。新型コロナ禍でも実感しましたよね。
それ以外の知識は行動しながら学んでいけば十分です。専門的な知識はその道の専門家にきけば済む話です。すべて自分で知識を得ようとする必要はありません。困ったときに相談できる専門家仲間をつくっていくことで問題は解決できます。
人脈が必要だと思う
「起業には人脈が必要だ」と言います。「どうやって人脈をつくったらいいんですか?」こんな質問もあります。短期間で人脈を一度につくる方法があるといったようなことを考えている人もいます。
そもそも人脈とは何なんでしょうか?ここを明確にする必要があります。人脈とは、自分の商売ひいてはあなた自身を応援してくれる人のことです。相手の脳の中で何人かの名前が浮かんだとき、自分の名前を真っ先に思い出してもらえる状態をつくることです。
例えば、助成金の専門家、会社設立の専門家と名乗る人は山ほどいます。「助成金ときいたら、○○さん!」「会社設立と言えば、△△さん!」と相手にピピッときてもらうことです。相手の頭の中で検索したとき、あなたの顔がすぐに浮かんでくるイメージです。
そのためにはどうしたらいいのでしょうか?それは目の前の仕事欲しさだけで行動しないことです。この人とつながっていたいという人がいたら今すぐ仕事にならなくても覚えてもらえるよう努めます。
一度会っただけではつながりはつくれません。ピピッと来たら、間をあけずに次の接点をつくる。「今度ランチでもいかがですか?」とハードル低くお誘いします。2回会うと親密度が断然変わります。
コミュニティでは、同じ志の仲間づくりを進めています。なぜならスタート後にゼロから人脈つくっていくのは大変だからです。「異業種交流会に参加したけどつながらない」「名刺交換だけで終わっちゃう」どうすれば売上につながる人脈ができるんだろう?独立起業するとこんなことに頭を悩まします。
信頼できる人脈になっていくのにはある程度の期間と接触頻度が必要です。準備段階から同じ目的をもって同じ釜の飯を食べてきている仲だからこそわかるお互いの人間性。利害ありきだけで人脈をつくろうとしても良い人間関係は築けません。
ざっくばらんに話せる人。ぶっちゃけで相談できる人。誰かと話していて相手が何かに困っていたら、「じゃあ、ちょっと知り合いに訊いてみますね」と言って、その場で電話できる人を何人もっているか。これこそ本当の人のつながりです。
最初から人脈がある人なんてそうそういません。独立起業を志した日から本当の人のつながりはつくっていくものと心得てください。
やりたいことが決まっていないといけないと思う
「自律した人生を歩む人って、やりたいことが明確でバンバン活動する人」そんなイメージを持っていませんか?実はそうではありません。
今日はとても刺激的でした。いつも会社で付き合っている人は同じような考えの人ばかり。そもそも独立の話なんてできる相手がいません。仮に話したとしても「そんなの無理に決まってるよ」的な感じで意味がありません。ここはまったくバックボーンの違う人の集まり。何よりみんな自律したいという想いが同じなのがいいです。会社のちょっと外に出るだけでこんなに価値観は拡がるもんなんですね・・・
起業に成功した人の話は確かになるほどというものばかり。でも今の自分と重ね合わせると程遠い感じ。FAAは等身大で現実的な話ばかり。それに自分の失敗談もオープンにしてくれるから親近感が湧いてくる。他のところはある程度基盤ができている人が次はフランチャイズにしようとか、稼ぎを増やそうとか、そんな話ばっかりで自分とは合わなかった・・・
これらはコミュニティを体験された方の声です。
世の中で起業塾と呼ばれるところでは、何をやるかが決まっていてビジネスアイデアをどう出すかとか、事業計画をどうつくるかとか、資金調達はどうやってやるかとかそんなことを教えるのが多いようです。中には「やること決めてから出直してきなさい」的なことを言われた人もいるようです。
それは間違いです。「まだ何も決まっていないけどとにかく前を向いて進んでいきたい」そんな想いこそがスタートです。漠然としていて当たり前。未知の世界ですから不安あるのも当然のことです。
まず最初にやるべきことは、自律の先の未来をどう描くのか?自分の中にあるダイヤモンドの原石は何なのか?それを見つけるためにこれまでの人生を振り返ること、自分自身を知ることから始めます。これがすべての土台です。ここがしっかりしていないと進めていく過程で必ずブレが生じます。ブレが出たら振りだしに戻ってしまいます。
自律に必要な土台かためをしてください。アイデアからではありません。漠然としたところから少しずつ確実にクリアに。あなたの人生を切り拓いていきましょう。
一定の需要規模が必要だと思う
「こんな顧客ターゲットにビジネスをしようと思うので、まずどのくらいのマーケットがあるか調べてみたいと思います」「こんなビジネスを考えていますが、市場規模を調べてみたら数万人しかありませんでした。だからやめようと思います」
こんな種類の相談があります。ビジネスをやるなら市場調査が必要・・・そんな思いからでしょう。
結論から言います。そんな作業はやらない方がいいです。市場調査とかそういう類のものは大手企業が新規ビジネスをやる際に考えることです。大きな会社はそれなりに費用、人などスケールを投じて新規市場に乗り込んできます。だから事前調査を周到にやります。
何千万、何百万の需要があるからイケそう・・・一見そう思いますよね。でもそんなに需要が見込めるところにはいろんな会社が参入します。結果シェアがどうのこうのといった競争世界になっていきます。競争の激しい土俵の上に一緒に乗っかって、個人が勝てるはずがありませんよね。
個人でやる商いは、狭いポジションにあるニッチなニーズをつかんでいきます。そしてそこにあるニーズを総なめにしていくイメージです。
「そんな細かいところでビジネスしているの?」とか「そんなところに需要があるの?」「成り立つとは思えないなあ」
そんなふうに言われるポジションです。「あ、そこね。前々からやってみたらいいと思ってたんだ」後になって周囲からそう言われるようなニーズです。ここに一番乗りできるか否かが勝負の分かれ目。実践者と評論家の違いがここにあります。
世の中にはいろいろな悩みで困っている人がいます。その困り事を細分化してみていきます。「困っている人は確かにいるけど、そんな手の掛かるところに大手が参入するとコストが合わない・・・」「今までありそうでなかったかゆいところに手が届く」を見つけることです。
困り事を見つけるときに絶対はずしてはいけないポイントがあります。それは自分の実体験です。こんなのがイケるかもではなく、過去の実体験から生まれた困り事にフォーカスしてください。自分が困ったことだからこそ相手の気持ちがわかるからです。
個人の商売に市場調査なんて要りません。どこにどんなニーズがあるかなんてやってみないとわかりません。商売とは自分で需要を創り出していくことです。誰もやっていない前例のない場所だからたのしいんです。この醍醐味を味わってくださいね。
ビジョンが明確じゃないといけないと思う
僕は独立してまだぜんぜん食えない頃、職業訓練校でアルバイト講師をやっていました。講師業務とともに、定期的に生徒さんとキャリアカウンセリングをすることがありました。その時の出来事をふと思い出したので紹介します。
Sさんは、訓練を終えたらコピーライターの学校に進むと決めていました。でも、訓練の中で学んだWEBがとてもたのしくなりました。どうせやるならもっと極めたい!その思いでさらに上のクラスに進むことにしたそうです。
その後、産業カウンセラーの方には「ちゃんとやりたいことを明確にして進んだ方がいい」と言われました。そう言われても何が本当にやりたいのかわからなくなりました。どうしたらいいんでしょう・・・こんな相談でした。少し力みすぎかなあ?と感じ、アドバイスをしました。
「三宅先生は、ゴールはふわっと決めて、あとはやりながら進んでいけばいいと言われましたよね。何だかとっても肩の力が抜けたんですね。世の中では、初心忘るべからずとか最初に決めたことをやり抜けってよく言いますよね。でもそうすると窮屈になっちゃうんです。先生の話、効いてますよ」
Sさんからの後日談です。
最初からやりたいことがはっきりしているなんて稀なケースです。だから、ゆるめにゴールを決める。あとはそのゴールへ向かいながら、流れにまかせてやっていく。あちこち寄り道してもいい。すると、その途中、途中で、「これは!」というものが見つかっていく。その感じたものに向け、また進んでいく。
自律へのプロセスにも同じようなことがあります。自分が本当にやりたいことは何なのか?そのことだけを必死で考えていると袋小路に入っちゃいます。そんなときは考えるのをやめてみる。考えても答えが出ないときがとりあえず動いてみる。これが一番です。
事業計画書を書かないといけないと思う
独立には事業計画書を作らないといけない。そんなふうに思っていませんか?であればそれは間違いです。必要なことは、自分がやりたいことを整理し納得感をもって第三者に話せるようになることです。
事業計画書はそのためのツールでしかありません。決して書面を作ることが目的ではありません。
コミュニティで発表会を開催したときのことです。6ヶ月にわたるプログラムで練り上げた自分オリジナルのビジネスモデルをメンバーの前で登壇発表するというものです。言ってみれば事業計画を発表する場です。
だれがどうなるキャッチフレーズ、世界でたった一つの肩書き、代表者のこれまでの経験、起業の動機、将来ビジョン、提供する価値、市場のニーズ、競合他社、顧客ターゲット像、商品サービス、お客さまのビフォアアフター、USP(独自の売り)、マーケティング・集客、協力者応援者、事業立ち上げスケジュール、売上予測計画、資金収支計画・・・
ビジネス立ち上げに必要な要素を総まとめで発表します。
発表内容は人それぞれです。事業を動かしていく上で必要な要素をほぼすべて固めて発表する人、商品サービスが固まらない状態で発表する人、自分がなぜこの仕事なのかを中心に話す人などさまざまです。
一見すると、6ヶ月もかけてつくってきたのにそれでいいの?という感じもあります。でもそれで良しとしています。もちろん無理くりビジネスモデルを固めるためのコンサルティングはできます。でも敢えてそれはしないことにしています。
一人ひとりは6ヶ月間にわたり、正しい手順に則してビジネスを組み立ててきました。ああでもない、こうでもないとブレストし、リサーチし、プレゼンし、考え尽くした上でここに到達しています。
その途中経過がまとめに出てきています。この場は自律へ向けての一通過点でしかありません。起業は自分で仕事を創り出すことです。
必要なことは自分が納得感をもって進めていけること。誰かに言われたからそうした・・・みたいな計画は途中ですぐに頓挫してしまいます。だから発表者の今を大切にします。
この場の目的は3つ。自分がやりたいことを第三者の前で話してみること。自分が何者かを一人でも多くの人に知ってもらうこと。聴いてくれた人からフィードバックをもらうこと。
それ以上でもそれ以下でもありません。ビジネスモデルが甘いとか、足りてないとかの批評は意味がありません。なぜなら誰にも答えはわからないから。商売はゼロから仕事をつくっていきます。世の中にないものを生み出していきます。未来予測は紙切れたった一枚でわかるような代物ではありません。
準備のゴールは事業計画書を作ることではありません。ビジネスをつくるために必要な要素一つひとつが本当に納得感をもった仕事に仕上がったか否かが重要。取り違えないようにしてくださいね。
店舗をもつのが当たり前と思う
自分のお店を開業して独立したい!こんな思いの人もいるでしょう。開業相談もそれなりにありました。ここで知っておいてほしいことがあります。
店舗開業には大きな落とし穴があります。一つリアルな話を紹介します。あるとき、物件さがしで不動産屋の人と話をする機会がありました。その人は店舗や事務所を専門にやっている人でした。興味があったので、その時店舗開業をする人にはどんな業種が多いのかを質問してみました。
最近多いのはサロンやエステ系の人ですね。でもなかなか物件がないんですよね。家賃は最低でも20万円くらい。美容室をやりたい人もたくさんいます。美容室だと電気やガスの設備が必要になるし、内装もきれいにしないといけないから初期費用が膨大です。スタートアップからこれって、結構バクチに近いですよね。
この話にはいくつかの重要な要素が入っています。まず「家賃が20万円」というところ。家賃は毎月支払いが発生するもの。「電気やガス設備代」も毎月です。
店舗を構えているだけでお金が出ていきます。これだけで固定費は20数万円ということになります。毎月20万円以上を払わないといけないということがどんなことか想像できますか?
次に「バクチ」という言葉。この業者とは何の利害関係もありません。一緒に歩きながら自然な会話で出てきた話です。ということは彼の「本音」です。今物件を探している本人に言うわけがない言葉です。
売る側のホンネは「この人、バクチをやろうとしているなあ・・・」そんなふうに思っているということがわかりました。店舗を借金して構えるということは、それだけ大変な決断だということなのです。
自分なりにこだわった店構えを夢見る。手の込んだ内装をする。思い通りのきれいな店舗が出来上がる。さあお客さんを迎え入れるぞーと思う。
数日経つ。待てども暮らせどもお客さんはぜんぜん来ない。売上が立たない。なのに初期投資でかけた借金の返済と家賃や光熱費の請求は毎月やって来る。
どうにかしてお客さんを集めないとと焦る。チラシのポスティング、駅前でティッシュを配る、看板を出す。広告費も膨大になってくる。焦れば焦るほど空回り。やがてお金が回らなくなる。あえなく廃業。残ったのは巨額の借金だけ・・・
決して作り話ではありません。現実に起こっていることです。開業1年目で40%が廃業に追い込まれるという統計の裏側にある実態です。
なぜそうなるのでしょうか?開業するにはお金を掛ける必要があるという先入観。そしてハコづくりの前にお客さまを集めることを忘れているのが理由です。
OBにも店舗を開業している人がいます。開業3年目で行列ができるジムにまで成長しました。自分のスタジオを開設するのが長年の夢でした。そのためにどう進めていくかを思案していました。同じように店舗をどう構えるかに意識がいっていました。
でもその前にやるべき集客について話し合うことで理解を深めていきました。一緒にプランづくりを重ねました。そこで始めたのがホームページ。日々コンテンツを書き溜めていきました。
最初から反応があったわけではありません。それでも懲りずに毎日情報更新を続けていきました。次第にアクセスが増えていきます。記事を読み込んだ人が体験レッスンにやって来るようになりました。
スタジオができるまではレンタルスペースを使ってレッスン。その結果スタート時には収支イーブンになる会員を集めることができました。そして見事開業初月から黒字スタートを切ることに。その後もホームページ集客は継続。濃いファンを獲得し続けています。
店舗や事務所を構えることだけに意識を置くのは「バクチ」です。バクチがしたいですか?最優先すべきはお客さまを集めていくにあります。お客さま不在のところに商売は成立しません。店舗開業の夢物語に溺れないように注意してください。
まとめ
50代を迎え、今まで長年かかわってきた会社生活にピリオドを打つ。そして自律できる人生へとシフトしていく。そのためにはいち早く準備に入ることが先決です。モヤモヤ考え続けていても事態は好転しません。
ここで挙げたよくある思い込みを払拭して、自分が主人公になる人生への一歩を踏み出していきましょう。
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