生き方

50代から再就職、転職それとも起業?選択肢を決める15の視点

50代の再就職から起業相談が増えている。50歳をすぎ会社業績に伴い人員整理。今の会社で関連会社に出向するか、会社を辞めて再就職するかいずれかの選択肢。関連会社に出向すると地位も収入も各段に下がる。そんな状況の中何をしていけばいいのか?本記事では実際に起こる現実と対応策についてまとめた。

50代で転職しようとすると起こる現実

これまで長年会社のために働いてきたのにこれか・・・プライドにも傷がつく。自分の力はこんなはずではない。再就職ということで転職活動をはじめてみる。書類は出すけど一向に返事はなし。思っていらっしゃるような仕事はきびしいですね・・・の返事。50代の再就職が思った以上にハードルが高いことに気づく。

僕は40代で2回の転職をした。1回目は44歳。そこそこの大手でいち早く管理職にも昇格、全国横断プロジェクトの立ち上げをしたりの経験を持ち、新規事業企画やリーダーシップ、マネジメントといった類の職種は強みだと思っていた。他業種でもバンバンやれる自信があった。

でも求人結果はさんさんたるもの。現状の年収を維持するには同じ業界の同じ職種でもしかしたらできるかも、他業種ならやれるポジションも年収もガタ落ちになるという現実が待っていました。それから転職活動に約1年を費やして、他業種のそこそこのポジションに年収8掛けで入ることになった。この後45歳で再就職したときはさらにポジションは落ち、年収は6掛けでした。中高年の転職がどれだけきびしいものかは身に染みて感じている。

「家族もいるし、住宅ローンもあるし。このまま会社で割り切って過ごしていくか、それとも転職するしかないか・・・」思いつくのはこんなことだ。そこで求人とか転職サイトを漁ってみる。今の条件で守りながら自分ができそうなことがほとんどないのがわかる。いざ転職エージェントに登録してもそうそう思ったような案件は見つからない。「50代から自分が思った通りの再就職なんてできないんだ・・・」

52歳きっかけになる出来事

50代になるとそれまでのサラリーマン生活にいろんなことが起こり始める。役職定年、予期せぬ降格人事、出向指示、リストラといったキーワードが並ぶ。「これまで会社ひと筋で頑張ってきた自分が何で???」そんなふうに感じる出来事が発生する。働き方モヤモヤ相談カフェでのAさんもそんな一人だった。

今の会社は新卒から勤めています。サラリーマン生活は定年までは居られないと漠然と思っていました。世の中の景況もあり、業績が落ちた会社では2度目のリストラが行われました。今回は幸か不幸かリストラの対象とはなりませんでした。会社の経営状況をみていると、この先の業績回復はあまり見込めないと思っています。50代の今、年齢的にも転職することは難しいと考えています。だからと言って自分で起業するには何をしたらいいのか?そもそも起業ってどういうことなのかもわかっていません。まずは、第三者の方にお話を聴いていただきたいと思って来ました。

相談のきっかけはこんな思いだった。約30分思いつくまま今の気持ちを話した。話しながら自分の頭を整理されているようだった。ここで重要なことは自分の口に出して話したこと。頭の中であれこれ考えていても何も事は進まない。モヤモヤを貯め込むと不安ばかりが押し寄せてくる。何も良いことはない。まずは第三者に話してみること、それが行動の第一歩だ。その一歩を踏み出せたAさんには不安だけの毎日から未来が見え始める。

50代で起業するか否かを決めるとき一番大切なのは、この先の人生をどうつくっていくかを描くことだ。これまで会社に依存してきた生活に区切りをつけ、これからは自分の手で人生を舵取りする。この想いが土台になる。もしやると決めたのならいち早く取り組みをスタートしよう。定年間際になって・・・なんて考えていてはだめ。その頃から始めていたら定年になって慌てるだけだ。新しいことを始めるのに年齢なんて関係ない。やろう!と思った日がスタートだ。

役職定年や雇用延長制度の先にあるもの

これまでサラリーマンとしてそこそこたのしく仕事をしてきた。でも50歳を前にした頃から「このままでいいのか」と考えるようになった。会社は55歳で役職定年になり、若手の補助的な仕事になる。

役職定年、格下げ、出向、減給、リストラ・・・50代を迎えると会社ではさまざまなことが起こりはじめる。ある日、年下の部下が上司になる、そんな話もたくさん聞く。「今まで会社一辺倒でやってきたのに、何でこんな境遇になるの??」そんな気持ちにもなるでしょう。

60歳になるといったん退職し希望すれば嘱託のような形で65歳ごろまでは会社に残ることができる。ただ仕事の内容はますます補助的な仕事になっていく。収入も激減する。できたらいつまでも現役で働きたい。社会とつながっていたい。でもこのまま会社にいたら、そういう思いは叶えられそうもない。どうしよう・・・

「今までのサラリーマン生活って何だったんだろう?」「自分としての人生は今後どうなるんだろう?」何もなく平和に日々が過ぎているときはそんなことは考えたりもしない。でも自分の身に降りかかってきたとき初めて立ち止まることになる。

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会社ひと筋30年勤務の先にあるもの

この道30年以上やってきた。第一線を解かれ、会社の環境に疑問を感じるようになった。今の立ち位置でずっとやっていくのがつらくなった。これから何でモチベーションを保ったらいいのか?転職も考えて知り合いの会社にきいてみた。でも環境が変わるだけで終わりそうな気がする。給料ベースも下がると言われると二の足を踏む。

じゃあ起業というような明確な志をもっているわけでもない。取り柄や得意なことがあるわけでもなく起業なんてできるはずがないと思う。悩んでいるうちにそもそも自分に何ができるのかがわからなくなった。50代同世代は現実的にどうやって道を選んでいるのか、定年後に向け何をしているのかを知りたい。

50歳を過ぎて会社の合併統合があった。毎年のように会社の名前が変わっていく。そんな中、いつ自分の仕事がなくなるかわからない毎日。自分で仕事をつくらないといけないと感じるようになった。自分が経験した思いを若い人たちに伝えられるような仕事がしたい。

さあ、どうしたものか。起業?そんなことが自分にできるんだろうか?見えない世界。50代から独立起業なんて無理に決まっている。でもやってみたい気持ちもどこかにある・・・多くの人がこんな感じで起業前モヤモヤ相談にやってくる。

再就職支援の現場に行ってみた

先日知り合いの紹介で、再就職支援をしている会社の独立起業支援部門の担当者と面談した。そこは誰もが知る大手企業。50代の人生設計という同じカテゴリーで大手はどんなことをやっているのか。とても興味深く思っていた。以下担当者とのやりとりの一部を抜粋する。

三宅:「最初に何をやるかを決めるのが重要です。天職塾ではその人の人生の振り返りを徹底的にやります。棚卸と言いますが、起業の第一歩としてはずせない原点プロセスです」

担当者:「あー、棚卸ですよね。それならうちの再就職支援部門でもやってますよ・・・」

その話し方、表現が異常に軽かった。いきなり姿勢を疑った。再就職支援は職務経歴書を上手く書くためが目的。本当の棚卸はこれから自分の人生をどうつくっていきたいのか?そのためにこれまで歩んできた人生はどんなものだったのかを掘り下げることだ。通り一遍な自己分析とは訳が違う。

三宅:「FAAでビジネスをつくるときは、その人の内面から出てくるものを最重要視します。わくわくできることを軸に、できることやこれまでの経験や人脈を組み合わせていきます」

担当者:「あ、趣味とか好きなことで起業することですよね。うちの会社の支援では、手打ちそば、カレー、ラーメン、喫茶、ワイン、など飲食店が人気ですね。でもなかなかうまくいかないみたいですよ・・・」

単に趣味を仕事にしようなんて軽いことではない。その人が心からワクワクできることは何なのか?その根っこのところをしっかり見つけること。これに経験や人脈をプラスしていく、もっと骨のある組み立てが必要だ。

担当者:「弊社の独立支援サービスでは、日本政策金融公庫でどうやってお金を借りるか、個人事業主と法人の違い、会社のつくり方などを教えています」「弊社ではビジネスが決まっていない人はお断りしています。結局フラフラしてしまうだけですから」

典型的なよくある独立起業支援の内容。正直がっかりした。と同時にこんな支援はしてほしくないと感じた。お金を借りること、会社の形態をどうするかということ、そんなことは後からでいい。起業支援に本当に必要なことはその人の人生をどうしていくかだ。資金調達とか会社設立とかそんな小手先の方法論を教わっても何の価値もない。それを鵜呑みにして起業準備に入ると後で痛い目にあうことになる。

「このままではいけない」「自分でいきいきとした毎日をつくっていきたい」自分の人生をどうしていきたいのか、どんな未来をつくっていきたいのか、そのために起業という手段が適切なのか?最初はここだ。そして起業すると決めたら、やる理由を持てて、自分らしく個性が発揮できることを仕事にしていく。身の丈に合わせ確実にビジネスをつくっていく。起業はお金やビジネスアイデアありきではない。

早期退職制度はフル活用する

もしそこで早期退職制度があるのなら活用して第二の人生設計をしてみるべきだ。早期退職制度はとても優遇された制度。普通の会社だと退職金だけ。規模によっては退職金すらままならない場合もあります。そんな中、優遇されてお金をもらえる、こんなありがたい話はない。

自身の体験から考えてみる。僕は44歳で大手電機メーカーを辞めた。自己都合なので年齢にリンクしたわずかの退職金だけだった。もちろん何もないよりは助かった。でももし早期退職制度があったらどんなに楽だったかと思い返す。

もちろん将来のために計画的にも大事だ。これまでの延長線で人生を歩むのならそれでもいいだろう。でも人生はいつどうなるかわからないもの。「何でこんな目に遭うの?」ネガティブに考えるとネガティブになるだけ。マイナスがマイナスを呼ぶ。何も良いことはない。
 
だったら前を向いてみることだ。今回憂き目にあったのは何かのご縁。人生を自分でつくりはじめるチャンスと受け止めてみることだ。

負のスパイラルは一人で抱えない

大手企業では全体で1万人規模のリストラをしているそうだ。訴訟になったり、なかには自殺して人もいるとのこと。仕事で自殺はだめだ。絶対に。僕もパワハラで追いつめられた経験をもつ。電車のホームから飛び込もうとしたことが数回あった。

誰にも話さない、話せない状態が続く。一人で考えつづける。どんどん深みにはまっていく。まさに負のスパイラル。その時は考え直すなんてできない状態になる。でもリストラで人生を終わりなんて思ってはいけない。

50代でリストラにあった。再就職できる会社なんてない。もう人生終わりだ・・・そんなことを思ってはいけない。50代だからこそできることがたくさんある。会社は一面的にしか人を見ない。これまでの50年は財産だ。他に2つとないリソースです。その財産をしっかり振り返ってみてほしい。

一人で考えても答えは出ない。深みにはまるだけだ。信頼の置ける第三者に話すことから始めてほしい。今は厳しくても必ず道は拓ける。信じてほしい。

働き方の選択肢を広げる

リストラ、役職定年の先は再就職だけではありません。自分で人生を切り拓いてみる。誰かにとやかく言われることもなく自分が思うように毎日をつくっていく。そんな選択肢もある。

自分で仕事を創るなんてできるの?そう感じるかもしれない。できるのだ。発想の仕方を変えればいい。これまで50年間でやってきた経験をしっかり書き出す。その中で誰かを救えるようなものがないかを考える。

ここさえ間違わなければ50代からの人生設計は大きく変わる。「このままでいいのか?」そう感じたときこそチャンス。現在を客観視し、過去を振り返り、未来を描いていこう。リスクを最小限にすればそんな怖いことではない。選択肢をひとつにしないでほしい。人生にはいくつもの選択肢がある。視野を広げることが第一だ。

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自分の人生をじっくり振り返る

一度、自分のこれまで歩んできた人生を振り返って書き出してみよう。自分には何もないなんて思わないこと。第三者からみたら驚くような経験をされているはず。これまであなたが歩んできた人生は財産そのもの。出会ってきた人たちはかけがいのないものに違いない。

そしてこれに自分がワクワクすることを掛け合わせていく。毎日をたのしく生きていくためにどうするか、これが大切だ。身の丈起業ならいくらでもチャンスはある。一か八か起業ではない。ニッチなところで濃いお客さまをつかむ自分サイズ起業だ。世の中には細かなところにたくさんのニーズが隠れている。あなたのもつリソースでそんな人たちの問題解決をしていこう。お客さまからありがとう!と言ってもらえるような仕事づくりだ。

独立起業の選択肢はミニマムで考える

起業のためには資金がいるんじゃないか?そんなことも考えるだろう。ここで知っておいてほしいこと。それはお金をかけずに起業するという発想を持つことだ。カフェをやるから店舗を構える資金だとか事務所をもつからそのためのお金とかそういうのは不要。箱を持たなくても起業はできる。むしろ箱なんて持たない方がいい。その方が身軽だからだ。

必要なことは転職、起業どちらでもない

転職しようか起業を考えるか。普通はそこから入ってしまう。でもこれらはどちらも手段でしかない。その前に腰を据えて考えてほしいことがある。人生の目標をどこに置くかだ。5年後こうなっていたい。仕事、家族、人とのつながり。こんな生活を送っていたい。これが目標だ。

人生の目標なくして、やれ転職だ起業だなんてやると必ず後悔するときが来る。目標が定まっていないのに手段に走ってもしょうがない。こんな人生にしたい。それを実現するとき大きなウエイトを占める仕事とどう関わっていくのか?その手段として転職なのか起業なのか?重要なのは考えていく順番だ。

転職にはそれなりのパワーが必要になる。転職活動自体に精神的身体的に負担が掛かる。結果転職したとしてもその後新しい環境に馴染み、仕事を覚えることでさらに労力が掛かる。結果どうなると思うか?

目先の環境は変わるかもしれない。でも給料は下がる。毎日はどうか?自分が思い通りの仕事なんてない。相変わらず上司がいて与えられた仕事を指示通りやらないといけない。新入社員のような気持ちで臨むことになる。この年になってまでこれか・・・そんな気持ちになるのは目に見えている。

そんな思いをしたいだろうか?違うはずだ。これからの人生は自分の手で切り拓いていきたい。きっとそう思うだろう。であればまずその思いを最優先にしてほしい。そこを根っこにしてどうするかを考えてほしい。50代で働き方を決めることは生き方を決めることと同じ。安易に手段から入ってはいけない。

もし今の会社でそれなりに我慢できるのなら転職しようなんて思わないこと。収入を確保するためだけと割り切って会社に行けばいい。変なこだわりやプライドは一切捨てる。その傍らで人生の目標を定めていく。そして目標を実現するために何をしていったらいいかを決める。

もしそれが起業という手段になるのなら、会社に居ながらにしてしっかり準備を進めていく。準備なしでいきなり会社を辞めてはいけない。準備不足でスタートしたら大変な思いをすることになる。このことは僕自身実体験している。同じ失敗は絶対してほしくない。とにかく起業前にじっくり準備をすること。ここはしっかりおさえておいてほしい。

50代で起業準備、そして60代こそ新しい人生をつくっていくのに最良のタイミングになる。今さら稼ぎではないはず。収益云々より本当の自己実現へ向かっていこう。

⇒50代から自分サイズで人生をつくる方法

一歩踏み出すきっかけになった事例

一歩踏み出すには勇気が要る。どんなことが引き金になるのだろうか?一つの事例を紹介したい。Aさんは50歳になったところ。IT企業勤務で日々仕事に忙殺されていた。

>会社にずっと属しているより自分で何かをやりたいなと考えていたものの、どこに向かって行けば良いのか分からなくなっていました。今の仕事の延長線上に考えるのか、やりたいと思っていることを始めてしまった方が良いのか等、迷っているばかりで何も先に進めない状態に陥っていました。

>「このままでいいのか?」これが起業準備へのきっかけでした。まず周囲の環境を変えることにしました。その後、自分に何ができるかを掘り下げることからスタートしました。そして手順をふまえながら粛々と準備していきました。

この話の中にはいくつかのキーワードがある。そのキーワードを掘り起こすと解決の糸口が見えてくる。

「どこに向かって行けば良いのか分からなくなった」⇒自分一人で考えていても答えは出ない。方向性が定められる第三者と話すことが解決方法だ。「今の仕事の延長線上に考えるのか」⇒この先にはワクワク感はない。何が自分を駆り立てるのかを見直す必要があります。
「迷っているばかりで何も先に進めない状態に陥ってしまう」⇒迷わず動くきっかけをつくるのが解決策になる。

今自分が抱える問題点を書き出し「どのようにしたら解決できるのか」をまた書いてみること。そしてそれを第三者に話してみること。このプロセスを繰り返すことで意外とシンプルな答えが返ってくる。

ワクワクを仕事に変えた事例

大手で35年勤めてきた。57歳で部長から課長へ格下げ。いわゆる役職定年。これまでの苦労が水の泡。おもしろくないなあと思うようになった。59歳には課長から平社員になってしまった。最初は今までやってきたことの延長線で仕事ができないかと考えてきた。でもそれではワクワクがない。棚卸をやってそれに気づいた。第二の人生は、好きなことを仕事にしたいと思う。

最初は定年までやってきた職歴を生かした起業を考えていた。でも何かに違和感を感じていた。そしてじぶん棚卸で人生振り返りを徹底してやった結果、学生時代に経験したバックパッカーに自分の原点を見つけた。

よしこれだ。やろう!と決心した。定年後に猛勉強をスタート。まったく未知の旅行業資格にチャレンジ、いくつかのハードルを乗り越え旅行会社を設立しました。まさに好きなことワクワクすることを掘り下げ自己実現した事例だ。

これまで培ってきたたくさんの経験と人脈。それを生かさない手はありません。資金を借りるとか会社を作るとか事務所を開設するとか、そんな見せかけのことだけを考えないことです。箱ものにこだわるとリスクを大きくするなるだけです。

それよりも大切なこと。それはあなたがこれからに人生をどうつくっていきたいかです。本当に好きなことは何ですか?毎日わくわくできることってどんなことですか?わくわくできることを軸にこれまでの経験と人脈を掛け合わせてみてください。あなただけのオリジナルなビジネスが浮かび上がってきます。そしてそれがあなたの新しい人生への幕開けになります。

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経験とワクワクを掛け合わせた事例

50代からのシニア起業はどうすれば軌道に乗るのか?それはこれまで培ってきた経験をベースに食べる仕事をつくること。そして自分が本当にやりたいことをあきらめずにやり続けること。この順番が重要だ。起業には周到な準備が必要。そして実際に動くときは思い切ってやる。ここではその成功事例を紹介する。

知り合いに58歳、独立起業して2年になる人がいる。このたび初の著書を世に送り出した。これまで35年間にわたり年間300冊のビジネス書を読破してきた。つまり10000冊ということになる。半端ない読書量を誇る大杉さんはペンで食べていくのが最終ゴールだ。その第一歩をわずか2年で成就した。素晴らしいことだ。出版だけに目を向けるととても華やかに見える。でも実はこの裏側にあるものにこそ50代が起業して成功軌道に乗るエッセンスが隠されている。

起業して1年半になる。大きかったのはハイブリッドキャリアスクールで6ヶ月間にわたりビジネスを固めていったことがある。準備なしで起業は無謀なことになる。次に当面食べていくことを決めておくこと。新しいことを始めるには結果が出るまでタイムラグが発生する。今動いていることは半年後につながってくるという感じ。だからすぐに収入になる仕事を用意しておくことが必要。

フリーエージェントアカデミーでは、やりたいことを3階、できることを2階、生計を立てることを1階と呼んでいるが、あくまで目指すのは3階、一方で2階、3階で土台をつくっておかないといけない。起業前この話はアタマではわかっていたが実際体験してみることで身にしみた。

先輩起業家にはこれでやっていけると確信が持てるには3年掛かるとよく言われる。起業して1年半経った今その半分に来ていることになる。おかげさまで手ごたえはある。

彼は以前よりずっと起業したいと考えてきた。でもなかなか起業までは行き着かず、銀行に22年勤めた後、3回の転職キャリアを積んだ。好きなことを仕事にしたい。生涯現役を貫きたい。70歳になったらハワイで著者として食べていくのが夢。57歳という最後のチャンスで起業することに踏み切った。

準備はしっかりやっていたものの起業すると右往左往の毎日になった。そんな中、まずはこれまでの経験を生かし経営コンサルタントとして収入を得る仕事をすることにした。一方で70歳になったときハワイで本の執筆だけで食べていきたいという夢を忘れることなく活動を続け、見事最初の著書を出版した。

出版を機に仕事の引き合いが増え、これからは研修講師としての立ち位置を確立しようとしている。あくまで夢実現にこだわり続けている。「しっかり準備して思い切ってやってみる。これが大切。準備がないと無謀な行為になる。思い切っては勇気をもって取り組むという意味」これから起業したい人へ向けたメッセージはシンプルで力強いものだった。

彼が最初に食べるためにしたこと。それはこれまでの経験を生かすという2階だ。ベンチャー企業の顧問としてのビジネスマッチングをするのが主たる内容だ。大手銀行に22年勤めた後、金融ベンチャー創業メンバー、人材関連会社、グローバル製造業で経営幹部として人事採用、研修などの責任者を担ってきた。

彼の収入の土台はこうした経験を仕事に変えたところから生み出されている。食べていく仕事の傍ら、日々書評コラムを書き続け、セミナーなどに参加しながら出版アプローチを繰り返し、夢実現へ向けあきらめることなく活動し続けてきたのだ。

50代には他の年代にない強みがある。それはこれまでの人生経験だ。30年を超える社会人経験、現業体験があるからこそ人の役に立てることがある。まずここにフォーカスし食い扶持をつくる。食い扶持をつくりつつ自分が本当にやりたいことをあきらめることなくやり続ける。50代が起業する上で大杉さんの成功事例から学ぶところは多い。

50代からの仕事づくりは小さく始める

「50代から起業しようなんて無謀じゃないですか?」「起業って若いうちにやることではないんですか?」こんな相談をよく受ける。まったく逆だ。50代こそ起業をはじめていくには格好の年代と言える。理由は2つある。これまで蓄積したもののの厚みと背負っている負担が軽減していくからだ。

これまで蓄積してきたものとは経験と人のつながりだ。社会人として30年以上。この間にしてきた経験や人のつながりは他にない価値あるものになっている。「そんな大したこと経験してないよ・・・」自分ではこんなふうに思いがち。とんでもない話だ。自分の価値は自分では気づかないものということを知っておこう。

背負ってきた負担とは、主に子供の教育費だ。50代は子供がそろそろ成人してお金が掛からなくなるという年代に差し掛かる。住宅ローンはまだかもしれないが教育費がなくなることで負担は大きく軽減する。

とかく起業というと、それなりに資金をかけて事業を大きくしていくイメージがある。それは先入観でしかない。逆の発想で自分サイズで小さく始めていくやり方をすすめたい。「小商い」という言葉がピッタリくるものだ。

50代から「小商い」で起業する準備を始める。自分を見つめ直す。少しずつ形にしていく。自分がつくったビジネスプランを動かしてみる。お客さまからの反応が良くなかったらそのつど修正していく。こんなプロセスを踏んでいく。いきなり会社を辞めるのは得策ではない。起業準備を進めながら試行錯誤を重ねていくのがベストの選択になる。

いきなりお金を投じてやり始めるのではなく、周到な起業準備ステップを踏むことだ。周到なステップとは、自分軸をかため、専門分野を決め、ビジネスプランをつくり、情報発信しながらテストし、試行錯誤しながらさらにビジネスを磨いていくことをいう。これをサラリーマンをしながらやっていくのがベストだ。

起業には準備プロセスが必要になる。これをとばしてスタートすると思わぬ苦労が待ち構えている。50代の早い段階でこのプロセスを動かし、60代以降の新しい人生に備えていくわけだ。60歳間近になって「これからの人生をどうしよう?」と思っても遅い。いきなり事業は立ち上がらない。だから50代の早い段階から将来へ向けての布石をつくっていくことをおすすめする。

まとめ

これまで会社生活がすべてという人生を送ってきたのなら一度自分を見つめ直してみよう。特に会社でそこそこのポジションにいる人は要注意。会社員でいるうちは周囲がちやほやしてくれる。でも会社を辞めた瞬間にそうしたものはいっさいなくなる。ちやほやしてくれた人は会社の看板や肩書きに寄ってきていたからだ。

あれこれ考えているうちに定年、会社を退職すると空虚な毎日が待っている・・・こんなはずではなかった・・・そう感じる日が来てしまう。一方で定年を迎えたら起業しようと考える人もいる。でも60歳になったとき起業しようというエネルギーは残っているのだろうか?毎日モヤモヤと会社生活を送るのなら、今の50代のうちから準備活動に入った方がいい。

日々相談に訪れる50代の人々。みんな今のサラリーマンの毎日に疑問をもっている。そんな中何かを始めないといけないと思っている。最初はそんな小さなきっかけからだ。

不本意な形で会社に居残るくらいなら、気力体力があるうちに新しいことをはじめてみる。家族と自分が食べていけるくらいの利益を出すことからはじめる。自分が心からワクワクできることと今まで培ってきた経験と人のつながりを掛け合わせて仕事をつくっていこう。そして自分サイズのしあわせを手に入れよう。

50歳から60歳の期間はとても貴重な10年間になる。この10年を会社のために使うのか、それとも自分のために使うのか。それを決めるのはあなた自身だ。自分の人生は自分がやりたいことをやる!そんな気概をもってみよう。新しいステージがガラガラと動きはじめるから。

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