自律した働き方

リモートワーク導入時に起こる問題点と解決策

「リモートワークなんて無理だよ」「直接顔を合わさずに仕事なんてできるはずがない」そんなふうに思っていたかもしれません。でも新型コロナ禍で実際にやらざるを得ない状況になったら「意外にできるものなんだね」「慣れてしまったらこのやり方の方がいいよね」といった感じになったりもしたでしょう。リモートワークを導入するときに起こる問題点と解決策、リモートワークの本質についてまとめました。

そもそもリモートワークって何なの?

リモートワークときいてどんなことをイメージしますか?オフィスに行かずに自宅で仕事をすること。そんなふうに思っていませんか?それは間違いです。自宅で仕事をするのはリモートワークのうちの一つの選択肢でしかありません。

リモートワークとは時間と場所を選ばない「柔軟な働き方」のことを言います。公園に行く、図書館に行く、近所のカフェに行く、海辺に行く、森の中へ行く・・・すべてリモートワークです。仕事をするのに一つの場所に留まる必要はありません。

同じ時間に起きて、同じ時間の通勤電車に乗り、同じ道を歩いて、同じオフィスの同じデスクに座って仕事をする。そんなことを繰り返しているとだんだんと頭は硬直化します。生産性なんて上がるはずがありません。

みんなが一斉に会社に来て一斉に帰るという既存のやり方を当たり前としないこと。一人ひとりが自分のライフスタイルに合った働き方を見つけ、多様な働き方をしていくこと。その人も生産性が最も高くなる時間と場所を選ぶ感覚をもってください。

リモートワークは単なる手法ではありません。働き方そのものを変えていくことです。今まで当たり前と思っていた働き方を根本から考え直すことです。単なる手法と思っていたら何も変わりません。最初におさえておきましょう。

リモートワークって特別なもの

オフィスで仕事するのが普通でリモートワークは特別なもの。こんな考え方を持っていませんか?もしそうならまずそこから考え方を変えていってください。一人だけリモートであとはあとはみんなオフィスからオンラインでつながっているような光景を目にすることがあります。これが特別感という状態です。良くありません。

やるなら全員がリモートになることです。その際、重要になるのがリーダーが自ら実践することです。自分でやることでリモートワークで起こることを体感できます。体験のないことを聞きかじった情報だけで机上で振りかざすようなことだけは絶対しないようにしましょう。

仕事とプライベートが切り替えができない

朝起きてすぐにパソコンやデスクがあるという環境。ちょっとやろうと思って気がついたらパジャマのまま数時間作業をしていた・・・自宅で仕事をするとこんなことが起こります。プライベートとの境目がないよなあ・・・続けているとこんな気持ちになってきます。どうしたら切り替えができるのでしょうか?

簡単な方法はまず服を着替えること。着替えるといっても外出用とかそういうものでなくて昼間に着る洋服のことです。これだけで切り替えができます。着るものがゆるいと心までゆるくなってしまいます。

「顔を洗って歯を磨く」「コーヒーを入れる」「今から1時間でタイマーをセットする」「机の上にはスマホを置かない」「パソコンにはSNSを入れない」など自分なりにスイッチを入れる方法もあります。

定期的に休憩をとることも大切。ランチの時間は1時間、眠くなったら散歩に出るなど自分なりのルールを決めておきましょう。通勤時間がなくなるわけですから、その分違う視点で有効に時間を使っていきたいものです。

仕事以外のこともスケジュールに入れるようにするのも大切です。散歩などのちょっとした運動の時間、家族との夕食時間などはとても重要なスケジュールです。仕事以外のことに意識を置くことで、オンオフといった考え方が一新できるようになります。

いつまでもだらだらメリハリなく作業をしてしまうというときは、「締め切り効果」を活用する方法があります。「今から1時間で買い物に行く」「12時までに今作っている資料を仕上げる」というふうに締め切りを決めてやります。できたら外に出かけないといけないというものが効果的です。

そもそもですが、仕事とプライベートを無理に切り替えようとする必要はありません。公私混同する働き方へ発想転換していきましょう。オフィスワークだと出勤と退勤でオンとオフという感じです。リモートワークだと日中で何度かオンとオフを切り替えることができます。朝起きて朝食までにオン、午前中も今から1時間集中、その後30分は読書など、時間を区切って取り組みます。この時間までにやり切るというのがないと、メリハリが効かなくなります。

子供が近くにいて仕事にならない

自宅で仕事をすると起こる現象ですね。気が散って仕事が進まないという感じになりますね。でも子供は自分の相手をしてほしいわけです。いつも接点が少ない分余計に感じるのでしょう。その気持ちに応えてあげたいものです。

午前中に一緒に散歩に行って子供と接する時間をつくる、午後からは遊び道具を渡して別部屋で仕事をするなど工夫している人もいます。会社の風土によりますが、子供も一緒にオンライン画面に参加するなど逆転の発想もありです。

「リモートワークになって3食家族で食べられるようになった。幸せを感じる」知り合いが言ってました。生きていく上で大切な価値観だと思います。

会社にいかないとメリハリが効かない

「会社に行かないと仕事ができない」「自宅だと集中できない」こんな声をきくことがあります。本当にそうでしょうか?大事な書類づくりがあるからと、始業前の早朝に会社に行って仕事をしたことはありませんか?

会社に行ったときのことを冷静に振り返ってみてください。上司に呼ばれる、電話が掛かってくる、自分が参加する必要がない会議に出ないといけない、同僚が話しかけてくるなどオフィスには邪魔者がたくさんあります。集中して仕事がしたかったら、オフィスに行かなければいいのです。

「***がないと***ができない」という言い方をしていませんか?それは既存のものありきでしか発想できないということです。「***のときどうしたら***できるのだろう」という言い方に変えてみましょう。口に出す言葉を変えることで考え方を変えていくことができます。

大切なことは何のために会社に行くのかです。直接会うことの良さ、直接顔を見ながらコミュニケーションをする場であることに意識を置き換えてください。

コミュニケーションが不足する

直接顔合わせをしなくなるとコミュニケーションが減る、そう思っていますよね?本当にそうでしょうか?それは思い込みでしかありません。コミュニケーションの目的をどこに置くかが変わってきます。

チャットの良いところは、気軽に構えることなく短くフランクでテンポよくやりとりができることです。雑談をチャットで チャットには絵文字を混ぜるといった細かな配慮もしたいもの。 思い込みでしかありません。定例ミーティングを行う、頻度を上げる代わりに一回の時間は短くします。最大15分といったところが目安です。言わないで伝えることはできないので全て文字にします。その前提は何でも言える環境づくりです。

常日頃ネットでしか顔を合わせることがない分、直接会ったときの価値が増します。会うからこそわかることもあります。化学反応も起こります。直接会うことが特別なイベントになります。会えたこの時を大事にしようと思います。ムダな会議を繰り返していて、時間の浪費をしていた今までとの違いは歴然としますよね。

オンラインだとコミュニケーションがうまくいかない

オンラインで画面を通じてだと、表情がわかりにくい、身振り手振りがないので意図せぬ誤解が生まれるといったことが起こります。また文字のみのやりとりだと冷たい印象になります。「あのひと言で傷ついた」「そんなつもりじゃなかったのに」といったことも。

文字のやりとりには、絵文字をつけて感情を表してみてください。少し慣れてきたら肯定的表現を使うことにも意識を置きます。「あなたは○○した方がいい」は「僕は○○してくれるとうれしい」といった感じです。一方で、文字の方が素直な気持ちが伝えられる、離れていても情報格差がない、接触機会を増やせるというメリットがあることも忘れないください。

運動不足になる

一日中在宅ワークをしていたら運動不足になります。同じ姿勢を続けていると腰や身体の節々が痛くなります。ずっと同じことを続けているのは精神的にも良くありません。とにかく動いた方がいいですね。

そんなときは少し環境を変えてみます。同じ机ではなく別の部屋に行く、座るだけでなく立って仕事をしてみる、公園やカフェに出かけるなどでリフレッシュできます。僕は週に何度か1万歩を目標に近所を散歩することにしています。1万歩というとそれなりの距離になります。歩いていると「こんなところのお店があったんだ」「ここに道が通ってたんだ」と新発見があります。車で通るだけでは見過ごしている世界。ささいなことのようですが大切なことだと感じています。

机に座ってずっと作業したり考え続けていたら頭の中がいっぱいいっぱいになります。からだを動かすことでいったん頭の中を空っぽにしてみましょう。戻る途中にいろいろと気づきが生まれてくることを感じられます。

顔を見たことがない人と話せない

「会ったこともない人といきなり話すのには抵抗がある」しごく当たり前のことです。そもそもオンラインがどういう特性のものかを知っておく必要があります。「オンラインは便利ですが、やっぱり直接会うのとは違いますね。画面越しだと制約があるのがわかりました」コミュニティの地方メンバーがリアルの集まりに参加したときに言ってくれました。その時、改めて気づかされたのを記憶しています。

オンラインは一定の関係性があってはじめて使えるツールです。最初からオンラインは良くありません。一度は直接顔合わせをする機会をつくります。また定期的に何らかの方法で直接顔を合わす機会をつくります。遠方なら年に数回でもOK。全てオンラインで完結するとは思わないでください。

孤独になりがち

一人で誰とも会わずに籠っていると孤独感を感じます。集中するときは一人の方がいい反面、ずっと一人だとメンタル的に良くない方向へ行ってしまいがちです。

オンラインだからこそチームとして結びつきを意識します。お互いに何でも言い合える関係性をつくること。毎回の会議で「最近あったうれしかったこと」を共有したり、チャットで話したり、オンラインランチ会、飲み会をやるなどいろいろと手段はあります。

人見知りや自分から話をしていくのが苦手な人にとっては、何か話さないといけないという雰囲気がプレッシャーになることもあります。「他の人の話を聞いているだけでもいいから気軽に参加してね」といった言葉を添えるのも一手です。

サボっているかもしれない

「ちゃんと仕事をしているだろうか?」と不安に思うかもしれません。でも、気になるということは責任が不明確で相手に対する信用がないということの裏返しです。メンバーが見えない不安をリモートワークのせいにしているだけかもしれません。

リモートワークはお互いの信頼関係の上でこそ力を発揮する働き方です。信じて任せることが本当の信頼です。任せると心地良いし、任された方も期待の応えようとやる気になります。大事なのは会社にいることより中味です。場所や時間で評価するのではなく、仕事の内容で評価する考え方に変えていきましょう。

監視する上司は存在価値がありません。どうすればメンバーが最高のコンディション、パフォーマンスを出せる環境をつくるか。それをサポートするのが管理職。メンバーの状況を把握し、あとは自分たちでやることを任す。節目節目の相談、判断をする。管理職という名前が良くないですね。管理職が何をするのかを再定義してください。

働きすぎになる

リモートワークだと怠けて働かなくなるという考えは浅はかです。むしろその逆で働きすぎが起こることに注意しましょう。自宅で仕事をしていると始まりと終わりがあいまいになりがちです。時間の区切りがないので「区切りのいいところまでやろう」「まだあれが残っている」とついつい時間を忘れてやってしまうこともあります。

仕事をやりすぎると燃え尽きてしまいます。18時にはいったん終えるといったメリハリをつけるようにしましょう。チーム全体としても「働きすぎは良くない」というムードをつくること。そしてお互いがお互いの働きすぎに目を光らせておく必要があります。

メンバーの状況がわからない

直接顔を合わさないとどうやってメンバーのことを把握すればいいかわからないということになるでしょう。そうならないように、定期的にメンバーと接点を持つようにしましょう。定期的に日にちを決めるのが重要です。

やり方としては、ふりかえりの時間を設けるのがベターです。「今日の仕事はこういう内容、できたこと・うまくいったことはこれこれ、課題はこれこれ」といった型をつくって会話します。一日の終わり、一週間のまとめなどを共有します。できたできないを確認するのではなく、今どういう状態にいるのか、どんな気持ちでいるのかに重きを置いて会話します。

文字でのやりとりで誤解が生じる

リモートワークはメールやチャットなど文字だけでやりとりする機会が増えます。用件だけを簡潔に書くと冷たい感じになります。自分が思うニュアンスともずれが出ます。やりとりしていると、「これって何が言いたいんだろう?」「どういう意図で言っているんだろう?」「既読になっているのに返事が来ないのは何かあるから?」など一度は心がざわついた経験もあるはず。

情報が相手に与える影響は、言語7%、聴覚38%、視覚55%であると言われます。メラビアンの法則と呼ばれるものですね。文字のやりとりは7%に入ります。わずか7%を言語以外のコミュニケーションで理解を助けています。だから文字だけのやりとりは誤解を招くわけです。

人間関係ができているのならまだしも、土台がないのにテキストでのやりとりのノウハウばかりを教えたりすると、コミュニケーションにギャップが生まれる原因になります。文字だけのやりとりは相手に十分な情報を与えることはできないということを意識する。込み合った話はオンラインで顔合わせして話す。一人ひとりが励行することが重要になります。

雑談する場が減る

直接会わないとちょっとした雑談ができなくなる。よく耳にします。実はオンラインだからこそ雑談しやすくできるという方法があります。

オンラインミーティングのときなど「雑談OK!」と口に出してください。雑談していいよと言わないとやっていいものか否かわかりません。また雑談してね!ということで雑談が始まります。そういうものだったりするんですね。週に一度「最近やっていること」というお題で雑談をする場をつくるのもありです。

もう一つがチャットの活用です。LINEなどで家族や友人と普通にやりとりしているあの感じです。今までリアルではあまり話をしなかったのに、チャットではカジュアルに話してきたというタイプの人もいます。意外な才能を見つけるキッカケにもなります。

手法もさることながら、重要なことはそもそもリアルで雑談できる雰囲気があったのかということです。雑談ができなくなるという人の方が常日頃雑談をしていないものです。雑談ができる環境にあるか否かは職場コミュニケーションづくりのキモです。

リモートワークだと生産性が下がる

こんなことを言う人もいます。全くの逆、生産性の真意がわかっていないからです。生産性とは労働者一人あたりが生み出す成果のことを言います。働く人の成果を生み出すにはその人が持つ力を最大限に引き出せる環境をつくることが必要になります。

ガチガチに管理するより、自由な裁量で働いてもらった方がやる気は高まります。自律した個人が集まることでよりチームとしての生産性が上がります。指示命令・管理を極力なくしていく。フラットな関係性、一人ひとりが自律するチームをつくる。それができる環境がリモートワークです。

全ての基盤はメンバーの自律性です。自律を促すには信頼が必要です。メンバーを信じて任すということです。任された方は責任を持って果たすということです。リモートワークをきちんと導入することで本当の意味での自律した自由な働き方を実現することができます。

まとめ

新型コロナ禍で一気に加速したリモートワーク。この状況を使ってやってほしいことがあります。不要な通勤、不要な会議、不要な女子、不要な根回し、不要なルール。これらをあぶり出してください。そして、本当に成果が上がる仕事の仕方とはどんなことなのか?働きがいのある働き方とはどういうものなのか?今やっている仕事の本質は何なのか?仕事の枠を超えて、自分の生き方を考え直す機会にしていきましょう。

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