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起業することを家族に理解してもらう方法

起業は自分だけでやるものではありません。生活を共にする家族と一緒に進んでいくもの。だから家族の理解は必須になります。「奥さんはあなたが起業したいことを知っていらっしゃいますか?」相談ではこの質問を最初にします。もし「実はまだ妻には話していないんです・・・」という答えが返ってきたとします。「まず奥さんにちゃんと話してください。それができないのなら起業は始めないほうがいいです」と答えます。なぜか?「そうは言っても家族の理解を得るなんて難しいなあ」そんなふうに感じていると思います。本記事では起業することを家族に理解してもらう方法をまとめました。

誰もが最初に陥る思考パターン

「起業を考えているのですが、家族の説得ができなくて困っています・・・」働き方モヤモヤ相談で多い相談内容のひとつです。家族を「説得する」のにどうしたらいいか?答えは「説得しないこと」。説得ではなく「理解」してもらい「協力」してもらえるようになることを念頭に置いてください。

説得だとなぜだめなのでしょう?説得は自分が思っていることを押し通そうという意識になっています。説得しようとしたら相手はどんどん逃げていきます。パートナーにはパートナーなりの考え方があります。いったんそれを受け入れつつ、どう理解してもらうかという姿勢が大切。多くの場合「説得」モードで臨んでしまうから自分の思いが伝わらなくなります。説得は自分目線、理解は相手目線です。少しずつ理解してもらおうと思えば歩み寄りができます。まず意識の持ち方を変えてください。

説得は一方通行です。お互いがあるとき必要になるのは相手とのキャッチボール。パートナーは元々他人の関係です。他人ということは別の人格です。その人にすべてをわかってほしいと思うこと自体に無理があります。家族には「最大の協力者」になってもらうことです。そんな意識で向き合うところから始めてください。

説得しようとする失敗例

今の会社でやっていく気にはなれない。何をするかも決めている。でも一番の問題は家族の説得をどうするのか?まだ起業のことは全く話していない。どうしたらいいか?

40代男性の相談を受けました。相談者はこれまで転職を複数回やってきました。そのときいつも自分一人で勝手に決めてきたそうです。過去にそんな行動があると奥さんも信頼しようと思えなくなります。いつも上司の悪口や会社の文句ばかり言っていて、やる気のない人にはパートナーもOKなんて出しません。それは単に現状から逃げているだけ。続くはずがありません。

これまで自分がどんな行動をとってきたのかを振り返ってみてください。もし落ち度があるなら謙虚に謝って正すところからがスタートです。

やる気・現実的な計画・具体的行動

説得でなく理解という姿勢の上で何をやっていくのか?3つあります。「やる気」と「現実的な計画」と「具体的行動」です。

僕が起業したとき、上の娘は大学入試前、下の息子は高校入試前でした。住宅ローンもたんまり抱えていました。もちろん今もですが(笑)一番出費がかさむタイミングに、妻は独立起業に理解をしてくれました。普通ではOKできない状況です。なぜだったのか?手前味噌で恐縮ですが我が家のことを振り返ってみます。

「なぜ理解してくれたの?」起業して数年が過ぎたとき妻に訊いてみました。「パパのやる気とこれまでの行動だね」そう言ってくれました。やる気とは、起業にかける思い。どうしてもやろうという気持ちが感じられたからだそうです。これまでの行動とは何か?それはその時代、その時代で熱く仕事のことを語っていたこと、それを実践していたこと。「この人は真剣にやろうとしているんだ」「とにかく一生懸命努力をする人なんだ」だから大丈夫だろうと思ってくれたみたいです。

エリートからパワハラ、サラリーマンとしての浮き沈みを存分に目の当たりにしていたことも大きく影響したと思います。当時会社であったことは良いこと悪いことすべてオープンにしていました。起業直前はかなり追い込まれていたのも実感したはずです。「協力しようと思った。健康ならば何でもできるでしょ!」後になってそんなことを言ってくれました。

あともう一つ、忘れてはいけないのが「現実的計画」を共有すること。リスクを追ったときどう対処するかをちゃんと話しておくことです。起業したいと言っても、じゃあ当面の収入はどうなるのかが一番心配なところです。それをできるだけ具体的にして話し合うことです。今掛かっている家計をもとにサラリーマンとしての収入が絶たれたらどうなるか、できるだけ具体的に書き出してみてください。そしてそれをパートナーと共有します。具体的な数字になると少し不安が晴れてきます。夫婦だからと説明に手を抜いたり机上の空論でやっては意味がありません。

「3階建ての組み立て」という方法があります。3階がやりたいこと、2階ができること、1階が生計を立てることというものです。独立起業した直後、たちまち収入はどうするのか?この3つをより現実的に組み立てていきます。生計を立てるものには、失業保険、アルバイトや貯金の取り崩しといった現実的なものが入ってきます。

家族の理解を得るためには「やる気」と「現実的な計画」と「具体的行動」の3つが必須です。こうして得た理解者は最高のパートナーになってくれます。起業を成功軌道に乗せるため、家族に最高のパートナーになってもらうことを念頭に置いてください。

視点を相手に変えてみる

とにかく理解してもらおう、理解してもらおうの一点張りでない視点も持ちたいもの。相手目線で全く新たな視点を考えてみるのもありです。例えば奥さんから見た視点で考えてみます。

主人が最近元気がなくなった。会社で行き詰っているみたい。毎日毎日どんどん落ち込んでいくのが目に見えてわかる。何とか元気を取り戻してもらいたい。主人は自分でいろいろアイディアを出していったり、自由を束縛されるのが嫌なタイプ。わくわくしながら自分がやりたいことを見つけてくれたらどんなに良いことだろう。そうなると昔みたいに家族との対話が増えて、みんな笑顔になって、しあわせな家庭に戻るから・・・

パートナーがつらそうな毎日を送っているのは見るに堪えないもの。独立起業するとたしかに収入不安はあります。ローンは返せるの?子供の教育費は?そもそも生活が成り立つの?いろいろなことが頭を巡ります。でもそのことより、パートナーがいきいき元気でいること。活力をもって毎日を送ってくれること。実はこれがすべて基盤です。

家族は最高の協力者

起業したら毎日仕事のことで頭がいっぱいになります。サラリーマンと違って自分の仕事だからです。たのしくてきびしいものです。思い悩んだときどうするか?起業家、経営者は孤独です。だから一人で悩み一人で決断しないといけない、こんなふうに言われます。ほんとにそうでしょうか?

実際はそんなキレイ事ではありません。人は悩んだら誰かに聴いてほしいものです。発想が出なくなったら第三者の意見もほしくなります。そんなとき誰に相談するのか?一番近くにいるパートナーです。もしかしたら一番手厳しいことを言うかもしれません。素直に聴けないかもしれません。でもそれは誰よりも自分のことをわかっているから。愛情の裏返しでもあります。「妻に仕事の話がわかるはずがない」そんなふうに思っているなら大きな間違いです。

ビジネスを始めるといつの間には売り手目線になっています。必要なことはいつも買い手目線でいることです。パートナーはお客さま視点で考えてくれる貴重な存在です。ちゃんと話しておけば誰よりも親身になって考えてくれます。パートナーと事業の話が共有できないようならその先に未来はありません。起業したいなら「会社へ行って稼いで給料を入れれば自分の役割は完了・・・」もしそんなことを思っているのなら今すぐ捨ててください。

奥さんにこうしたい、ああしたいとあまり話していない人が実は多いんじゃないかな?ちゃんと話せばいったんは聴いてくれるはず。そこからアイディアを一緒に考えてくれるかもしれない。そうすれば力は倍増になる。家庭を守る一家の主のこと、ちゃんと話してほしいはず

ある日、妻はこんな話をしていました。「稼業」という言葉があります。生活のための収入を得る仕事、商売、なりわいという意味です。稼業には「家」という文字が入っています。起業したら収入を得ないといけません。でもそれだけはありません。家つまり家族とつながった仕事にしたいものです。そのために家族の理解、家族との共有は必須テーマです。

家族からの副産物

起業したことで得ることができた副産物があります。そのうちで大きなものの一つが子供たちに父親としての生き方を伝えることができたことです。

サラリーマン時代は猛烈サラリーマンでした。全国規模のプロジェクトを任されやりがいに満ちていました。早朝から出社し帰宅は深夜。いつも仕事のことで頭一杯。当時子供たちは小学生と幼稚園。朝早く家を出て、夜遅くに帰ってくる。平日は子供たちと顔を合わすことも少ない毎日でした。

お父さんって会社に行って何やってんだろう?あとできくとそんな感じだったみたいです。会社では一生懸命に社命に向かって働いている。いろいろなストレスも抱えている。でも家族には何をしているのかわかってもらえない。サラリーマンはさみしい性分です。

その後、独立。最初のうちは自宅をオフィスにしていました。リビングにパソコンがあったのでそこで仕事です。ときにはお客さんとのやりとりもありました。もちろんヘッドホンをしているので相手の声は聞こえません。そんな風景を当時中学生の息子は見ていました。まさに僕のうしろ姿を見ていた感じです。

コミュニティが少し軌道に乗ってからは妻と娘に受付を頼みました。手が足らないのが一番の理由。結果として妻も娘も僕がどんなことをやっているのか、どんな人たちと一緒に毎日を送っているのかを目の当たりにすることになりました。何にやりがいを感じているかも伝わりました。

自分がどんな「働き方」をしているのか?ひいてはどんな「生き方」をしようとしているのか?人生のうちで仕事が占めるウエイトは大きいです。働き方が生き方そのものにつながると言えます。

家族は僕の「働き方」を知っています。それは僕の「生き方」を理解してくれていることにつながります。そして日々応援してきてくれています。家族と本当の意味での一体感。独立起業で得られる大きな副産物です。

娘とのエピソード

ある日、娘と二人で焼肉を食べに行きました。娘はその年から社会人。勤め始めて半年というところでした。家で少しは話すことはありますが、二人だけで場所を変えてゆっくり話すのは久しぶりのことでした。

しばらく他愛のない会話をした後、娘の仕事の話になりました。営業職をやっています。毎日お客さんのところへ出向いて提案活動を繰り返しているようです。事務職にはなりたくないと言っていました。「営業の仕方を教えて」とか訊いてくることもありました。営業でもつかなあ?と内心心配していました。

社会人っていいよね。学生の頃は何も考えず毎日をたのしんでいただけ。今は営業なのでそれなりに自分で時間が管理できる。お昼ごはんもみんなと一緒じゃなく自分の時間で食べられるし。それに社会人になったら目標みたいなものができた。目標があるからやり甲斐があるし、毎日きつくても会社に行こうという気持ちになるよ。

よくわからないけどそんな感じ(笑)パパが今やっていることってすごいと思う。だって周りに自分で会社やっているお父さんなんてそうそういないから。でもお休みが少なくて大変だよね?

いやそんなことないんだよ。パパは今やっていることを仕事と思ったことがないから。何て言うか仕事をしているというより自分で考えたことで毎日を過ごしている感じ。自分がやりたいことをやりたいようにやっているからかな?誰も文句言う人なんていないし。サラリーマンやっているときは考えられなかったけどね

へえ~そうなんだ・・・いろいろ言われるのはわかる気がする。うちの会社でもそうだから

こんな会話をしました。後日妻にこの話をすると「朝早くからパソコンに向かっていたり、クライアントさんとスカイプしたり、そういう姿を見てきているからじゃないの?子供たちって結構親のこと見てるものよ」みたいなことを言っていました。

学生時代はポワンポワンしながら何も考えることなく友だちと過ごしていた娘。そんな娘の成長ぶりに驚きました。同時にその前向きな姿勢をみて、起業した最初の頃の想いが蘇ってきました。これからも子供たちが胸を張っていられる。そして誇らしいと言われるような存在でありたい。改めてそんな想いにさせられました。

息子とのエピソード

息子は高校時代からバンドに明け暮れる毎日を送っています。そんな息子がいつもお世話になっている場所で合同ライブを企画しました。複数のバンドに声を掛けてイベントに仕立てたもの。妻と一緒に出掛けました。

ここまで来れたのは仲間のおかげです。自分が好きなことはまだ見つかっていません。でもそれを必ず見つけて突き進んでいきたいと思います。音楽とは何らかの形で付き合っていくつもりです

演奏の最後に出てきてボーカルの合間にこんなコメントをしていました。渾身のステージでした。その一生懸命さに自分の息子ながら心を動かされました。コメントに共感もしました。もしサラリーマンをしていたらきっとこんな素直な気持ちにはなれなかったでしょう。親としての立場だとか体裁のようなものが邪魔をしたような気がします。それ以前にこうした場に足を運ぶことに躊躇していたでしょう。やれ仕事に追われているとかそんなくだらない言い訳をして。

起業してからは全てにシンプルになりました。良いことは良い、素晴らしいことは素晴らしい、感動は感動とそのままを表現するようになりました。それがたとえ息子であろうと誰だろうと。サラリーマンだった父親が起業して変わった。息子にもきっとそんな空気が伝わったように思います。息子のメッセージにもそんな背景を感じられました。

子供たちの後押し

意識的に伝えようと思ってしたことではありません。子供たちが僕が日々やっていることを見ながら自然に感じてくれたことだと思ります。

娘が高校に入学するときに創業しました。下の息子が中学入学でダブル入学というタイミングでした。そんなときわざわざ独立しなくても・・・という感じですよね?でもタイミングってそんなもんだと思います。

収入がなくなる中、果たして子供たちを学校へ通わせることができるのか不安もありました。でも自分で決めた道、やるしかない!そんな気持ちで前へ前へ進んできました。と言うと精神力が強くてポジティブ思考なんだと感じますよね?いえいえ、実はそんなことはないんです。日々落ち込むときは落ち込むし、「あ~もうあかん・・・」そんなふうになる日もたくさんありました。

家に帰って少し元気がなさそうにしているとき、娘と息子が僕を茶化してくれました。ギャグを飛ばして場を盛り上げてくれました。いつも満面の笑顔で支えてくれました。頭の回転が速すぎてついていけないことがしばしばですが(苦笑)。もちろん今でもそんな感じです。子供たちの応援があって今の僕があります。

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