サラリーマン時代に副業に取り組む人もそれなりにいます。副業と起業はどういう関係にあるのか?副業を軌道に乗せて起業するといったながれはあるのか?単なる副業の先に起業はありません。なぜならその先の人生をどうしていきたいのか?自分軸が何なのかを考えるところから始まっていないから。
今回はサラリーマン副業をしている人にありがちな考え方をまとめました。
安全策ばかり考えてしまう
起業にはずっと前から漠然と憧れがあった。そんな中副業をしてきた。株、不動産投資などサラリーマンとして一番やりやすいものを選んできた。そこそこ収入にもなった。ただ起業となると倒産したらどうしよう・・・と怖くなる。これといった専門性もないし。サラリーマンだと自分がやりたいようにできない。やったことが収入直結になるようにしたい
10年間管理職をやってきた。そこそこのポジションになった。人の管理ばかりでたのしくなくなった。時間的にも少し余裕が出たのでアパートや投資信託の副業をしてきた。事業家の手伝いもしている。いろいろやってそこそこ結果も出してきたけど好きなものがない。どれだったら商売になりそうかもわからない。3、4回転職もしてきた。転職しても同じことになりそう
セミナーに参加してもらった副業している40代サラリーマンの話です。どちらも現状のままでは起業へは進んでいけません。なぜか?いくつかの理由があります。
まずどちらも安全な策を講じた上で起業に進もうとしているからです。起業へ向けてこれで安全というものはありません。どこかで腹を決めて動かないと始まりません。心構えが不足しています。
起業する意味を理解していない
起業するとはどういうことなのか?起業とは自分でシゴトを創り出すことだ。世の中にあることで食べていけるようになることではありません。株や不動産投資はサラリーマン副業の定番。それらは単に収入を得る手段でしかありません。やっていること自体にワクワク感は得られません。途中で頓挫することになります。
稼ぐことにしか目がいかない
さらに収入になること、商売になることというところにばかり目が行っていること。もちろん起業したら収入を得ないといけません。ただそれだけで考えるとずっと続けていける仕事はできません。対価はお客さまのありがとうの結果です。お客さまによろこんでもらえ、そのことに自分がワクワクできるものは何なのか?視点を変える必要があります。
給料を超えたら起業すると考える
「サラリーマンをしながらまずは副業、稼ぎが給料を超えたら起業する」
この考え方ってどう思いますか?モヤモヤ相談でこんな質問をよく受けます。答えはシンプルです。起業することをゴールにするのなら上手くいきません。理由は「稼ぎが給料を超えたら」というところにあります。
サラリーマンは安定収入です。毎月給料が入ってきます。起業したら安定収入はなくなります。お金のことは一番の不安です。だからそう思うのでしょう。僕もサラリーマンの頃そう思っていました。
じゃあ、いつになったら稼ぎが給料を超えるのでしょう?1年先?2年先?それとも???仮に超えたとして、その次の月にまた落ちたらどうするのでしょう?
「まだ安定してないから先送りしよう・・・」きっとそう思います。こんなことを繰り返し、気がついたら会社はいまいち、でも少し副業している、そのうち仕事が忙しくなってサラリーマンの世界に戻る・・・容易に想像できる姿です。
起業してからの稼ぎは毎月変動します。たくさん稼げるときもあれば凹むときもあります。大前提の話です。だからどうやって安定した収益を得るかを日々考えていくわけです。
副業でもそれなりの満足が得られるはずです。会社とはちがう世界で自己実現ができるわけですから。「サラリーマンをしながら副業をする」これも一つの選択肢として考えていく方が無難です。
ただもし起業家になりたいのなら決意が必要です。やろうと決めたらやるしかありません。収入がどうこう言っているようではいつまでも副業のまま。副業はどこまでいっても副業。自分で毎日をつくっていってることにはなりません。
なぜ起業したいのか?起業した先にどんな人生をつくっていきたいのか?自分のハラにおとすことが先決です。
副業禁止なのでこっそりやるしかない
働き方は多様になったと言われます。でも実態はぜんぜん追いついていません。相談に来る人の中で多い質問が副業禁止にどう対策するかというものです。相談を聞くかぎり、多くの会社はまだまだ副業禁止ばかり。
会社にバレないためにどうしたらいいかみんな不安を抱えています。SNSに投稿すると会社の人が見るかもしれないからとても不安・・・こんな話は山ほどあります。
なぜ会社は副業を禁止するのでしょう?「仕事が疎かになるから・・・」「社内のリソースが流出するから・・・」そんな理由なのかもしれません。実際は全くの逆です。社員個人は自律心をもつことでいきいき度が増してきます。モチベーションも上がります。結果、会社業務にも好影響が出てきます。
もし副業して仕事が疎かになるような社員がいたら会社にとって不利益になります。その見極めの策にもなります。そもそも終身雇用で最後まで社員の面倒を見ることもできないのに、何の権利があって副業禁止なんて言えるのでしょう。
独立する人が出てくると会社にとって損失になるから・・・こんな懸念があるのかもしれません。これもおかしな話です。自社で力を蓄えて独立する社員がいたら、独立後はパートナーシップをつくって一緒にビジネスを拡大していけばいいだけの話。会社に育ててもらった恩がある。他にない強固な絆になることは間違いありません。
大手企業にも好事例があります。ロート製薬が国内の正社員約1500人を対象に他社やNPO法人などで働く兼業(副職)を認める「社外チャレンジワーク」と名付けた制度を施行することを発表し話題になりました。
ロート製薬のホームページには、社員に多様性を持たせ、自社のビジネスを積極的に多角化したり、技術が応用できる可能性を広げたりすることで「有事の際の生き残り」という観点で強みとなる可能性もある・・・とコメントがあります。まさに大切なのはこの視点です。
副業禁止はナンセンス。社員が会社外の世界で新たな経験や視点をもつことで、社内の活性化につながります。毎日顔を合わせていると知らない間に同質の人間になっていくだけ。同じ価値観、同じ指向の人から新しい発想なんて生まれません。
これからの新しい働き方に副業禁止なんて旧態依然とした考え方は不要です。会社はお客さまによろこんでもらうためにどうしたらいいかの共通ゴールへ向け、さまざまな立場のメンバーで知恵を出し合い、行動するチームになることこそ重要です。
副業の延長線に新しい世界を探す
国が後押ししていることから副業元年と言っているときもありました。働き方改革の一環で副業を容認する企業も増えてきていると話題になりました。副業で選択肢を広げることで働き方を多様化しよう、そんな方針かもしれません。でも副業を広げたからといって働き方そのものは変わりません。なぜなら本質をみていないからです。
会社が副業OKになった。じゃあ副業を始めようということになります。するとアフィリエイトだ、FXだ、ネットワークビジネスだ、不動産投資だ、そんなことが話題に出てきます。
この流れではうまくいきません。そもそも何のためにやるのかが明確になっていないからです。とりあえず副収入を得たいということと働き方を変えることには何ら関係はありません。
先日コミュニティの場に参加したときのこと。そこには起業して1年以内のメンバーが来ていました。「全くうまくいかない」「自分の思うようにならない」「まずは自分を売っていかないといけない。でもなかなかキッカケがつかめない」話し込むことで結構ネガティブな本音も飛び出してきました。
起業家先輩の生々しいネガティブな話を聴く。これから起業を志すメンバーにとっては恐怖にきこえるかもしれません。不安も大きくなるでしょう。当たり前のことです。重要なことはその後の気持ちがどうなるのか。「そんなに大変なのなら起業はどうしよう・・・」そう思うのならやめた方がいいです。
「やっぱりそうなんだ。起業は甘い世界ではないんだ。そのつもりで取り組んでいこう」
そう思うのなら起業へ向けて進みます。そもそも1年やそこらで軌道に乗せようということ自体ナンセンス。本当の意味で成功軌道に乗るには3年掛かります。石の上にも三年。どんなことがあってもかじりついていく覚悟がないようで成功はあり得ません。
複業や福業といった言葉もよく見かけます。一見新鮮で良さそうに見えます。でも「本業あっての・・・」というところには何ら変わりはありません。本筋を立てていくには退路を断つ姿勢が必須。ここを甘くみていたら商売なんて成立しません。
ちなみにFAAでは副業支援は一切しません。副業で現業の収入が超えるようになったら起業したいという人もお断りしています。副業はどこまでいっても副業。副業がしたいなら副業。起業したいのなら最初から起業がゴール。明快です。
副業の先に起業がある・・・それはまちがいです。副業の先に起業なんてありません。起業するとはこれ一本で食べていくと決めること。その覚悟が持てない限り起業はできません。
独立起業するとサラリーマン時代のように毎月25日になったら自動的に給料が振り込まれてくることはなくなります。自分で稼がないとお金は入ってきません。毎月新しい月が始まると収入はゼロスタート。さあ今月はどうやって売上をつくっていこうか?毎月不安にかられます。
年2回のボーナスをあてにして買い物することもできなくなります。住宅ローンや子供の教育費をボーナス払いにしていたらいきなり痛い目に遭います。まとまった支払いが必要になっても、すべて自分の稼ぎの中からやりくりしないといけません。ボーナスが減ったとかそういうレベルの話ではありません。まったくのゼロです。まとまった金額をストックしておかないと家計に直結します。
当たり前のことを言っています。でもこの現実を受け止められるか否かが全てです。
年が明けると確定申告が待っています。サラリーマン時代は源泉徴収で天引きされているから税金を持ち出している感覚はありません。起業すると年明けにまとまった金額の税金を払うことになります。
こんなに税金を払うの?年間でまとまると大きな金額になります。百万単位で一度にお金が出ていくといきなり残高がきびしくなります。「キャッシュをどうやって回そうか・・・」ここでも不安が募ってきます。
これが起業の現実です。もしそれが嫌ならずっと副業を続けていった方がいいです。いつか起業したい・・・そんなことを言いながらお茶を濁して毎日を送っていくことをおすすめします。本業あっての副業。つまり会社あっての自分という人生を歩み続けることに二度と文句を言わないことです。
起業の醍醐味は自分で人生をコントロールできること。自分でコントロールできることがどれだけたのしいことかは起業するとわかります。サラリーマン時代、いったい何をしてきたんだろう・・・そんな思いにもなります。
一方で自分でコントロールできるということは、良いことも悪いことも受け入れてやっていくということ。文句を言っていても何も始まりません。すべて自分の責任でやる。起業を志すスタート地点はここにあります。
まとめ
サラリーマンで副業をしている人に多い考え方の傾向をまとめました。自分がやりたいことを決めてそれに突き進む。その傍らで収入が得られる手段ももっている。これが理想かもしれません。
ただ逃げ道をつくってばかりでは道は拓けません。ここぞと決めたら邁進する。こうなりたいという未来があって起業という手段をつかう。なぜそのシゴトなのかの自分軸をつくる。そんな思いで取り組んでみてほしいです。